研究課題
基盤研究(C)
平成25年度は,サーバからユーザへの配信経路が指定され,1つのユーザへ複数のサーバから供給することが許されている場合のサーバ割当問題について研究を行った.特に,グラフ構造の観点から,その計算困難性と容易性を解析した.まず,計算困難性として,カクタスと呼ばれる非常に限定された構造を持つグラフに対してさえ,サーバ割当問題はNP困難であり,多項式時間では解けそうにないことを示した.カクタスは,後述する木に近いグラフクラスである.なお,NP困難の証明は近似率を保持するように構成されている.そのことから,どんな定数に対しても,カクタスには多項式時間の定数倍近似アルゴリズムが存在しそうにないことも示した.次に,計算容易性として,グラフを木に限定したときに,サーバ割当問題を擬多項式時間で解くアルゴリズムを与えた.アルゴリズムは動的計画法に基づいており,グラフの点数と辺容量の最大値に関する多項式の計算時間で最適解を求めることができる.これは,辺容量の最大値が小さい(すなわち,多項式サイズ)であるときには,問題が多項式時間で解けることを意味している.ただし,辺容量が大きいときに,この問題が木に対してNP困難であるかどうかは未解決である.最後に,1つのユーザが通信できるサーバの個数に上限を設けたサーバ割当問題も扱った.この供給サーバ数が制限された問題は,その上限を十分に大きく設定すれば,先の問題と一致する.このように一般化した問題に対しては,木に対してNP困難であることを示した.
2: おおむね順調に進展している
グラフを木に限定してはいるものの,25年度中に経路指定があるモデルに対して,アルゴリズムの開発を行うことができた.一方で,モデル設定の相互関係の解析は,今回のアルゴリズム開発を受けて,26年度も継続する予定である.
サーバからユーザへの配信経路が指定されていないモデルについて,計算困難性と容易性の解析を行う.特に,よく知られているグラフのフロー問題との関係を解析し,本問題に対するアルゴリズムを開発したい.25年度に得られた結果と,これらの解析を基に,モデル設定の相互関係を調べていきたい.
パソコンなど物品購入が,予定よりも安価に済んだため.計画に大きな変更はないが,26年度以降は成果発表に伴い,旅費の支出が多くなる予定であるため,次年度使用額と合わせて有効に活用していく.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
IEICE Trans. on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E97-A ページ: 848-857
10.1587/transfun.E97.A.848
Theoretical Computer Science
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.tcs.2014.01.007
Lecture Notes in Computer Science
巻: 8070 ページ: 28-39
10.1007/978-3-642-40164-0_6