研究課題/領域番号 |
25330005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
内沢 啓 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (90510248)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 回路計算量 / 計算理論 / 論理回路 / しきい値回路 |
研究概要 |
平成25年度は主に,本研究の主題であるしきい値回路の出力パターン数と密接なつながりを持つことが知られている,しきい値回路のエネルギーと呼ばれるパラメータに着目して研究を行い,特に以下に示す成果を得た. まず我々は,脳の神経回路網が実現する画像処理タスクに基づいて提案されたあるブール関数fに着目し,fを計算するしきい値回路の設計を行った.ここでfは,0と1を内部要素として持つ2つの1次元配列入力として受け取り,その2つの配列に含まれる0と1の相対的な位置関係が,予め規定された条件を満たすかどうかを判定する関数として定義される.このfを計算するしきい値回路の設計を試みた結果,大きなエネルギーが利用できる条件下では素子数を小さく抑えたしきい値回路を与えることができ,逆に素子数を多く利用できる条件下ではエネルギーを小さく抑えた回路を与える,特殊な回路設計手法をを与えることに成功した.この成果は,fを計算するしきい値回路のエネルギーと素子数という2つのパラメータの間にトレードオフの関係が成立すること,すなわち,エネルギーと素子数がともに極端に小さい回路を設計できないことを示唆している.特に我々の結果は,そのトレードオフを与える式が,出力パターン数によって与えられることを強く示唆するものとなっている.よって本結果は,しきい値回路の出力パターン数と計算能力の間に強い結びつきがあるという我々の予想を支持する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の1年目に行う予定であった,過去の研究で与えられたしきい値回路の出力パターン数の解析,設計手法や証明手法に関する基礎的な知見の収集は順調に進んでいる.特に,しきい値回路の出力パターン数と密接なつながりのある,しきい値回路のエネルギーや,線形決定木の葉の枚数に関しても基礎的な知見が順調に収集できており,2年目以降の研究に予定通り活用できることが見込まれる.また,回路の出力パターン数を数え上げる問題についても,年度の後半より精密な問題設定において研究が新たに展開しており,2年目以降に成果が得られると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の1年目がおおむね順調に進展していることから,2年目となる本年度は予定通りに研究計画を実施する.特に,1年目に収集した基礎的な知見を活用し,出力パターン数の階層定理に直結する命題の証明に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の1年目にあたる本年度内には,より多くの国内学会に参加し情報収集を行う予定であったが,国内学会・研究会への参加,および国内の研究者との研究打ち合わせによる情報収集によって,予定よりも効率的に情報収集が実現した結果,旅費の使用が低減した. 本年度および来年度の研究成果発表の旅費として,主に使用する.
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