研究課題
本年度は主に,閉路を持つ論理回路の出力パターンに着目し研究を行った.閉路を持つ論理回路は,通常の閉路のない組合せ論理回路と異なり,回路内の各素子の出力が初期の出力パターンとして与えられ,その出力パターンが離散時間の経過にしたがって移り変わる計算モデルである.この計算モデルの下,与えられた閉路を持つ論理回路が生成しうる出力パターンに関連するいくつかの決定問題に着目し,その計算複雑さを調査した.その結果,それらの問題が他の多くの決定問題とは異なる,特異な計算複雑さを持つ可能性があることを示唆する結果を得た.具体的には,閉路のある論理回路の計算モデルの下で,(1)論理回路,及びその回路に対する2つの初期出力パターンが与えられたとき,それら初期出力パターンが時間の経過とともに合流するか?,(2)論理回路,1つの初期出力パターン,及び整数 k が与えられたとき,その出力パターンの移り変わりによって構成されるサイクルの長さはk以上か?,なる2つの決定問題を考え,(1)の問題が計算量クラスUPに属し,(2)の問題が計算量クラスUP及びcoUPに属することを明らかにした.この成果はこれら2つの決定問題がNPに属する一方で,NP完全ではなく,また多項式時間で解くこともできない,NPIと呼ばれる特殊な計算量クラスに属する可能性を示唆している.このような性質を持つ問題は計算量理論の分野で非常に重要な役割を持つが,その候補となりうる問題はこれまでに数例しか見つかっておらず,非常に興味深い成果と言える.
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