研究課題/領域番号 |
25330012
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 治道 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70433323)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子計算量理論 / 量子NP / 対話型証明系 |
研究実績の概要 |
本年度は主に以下の研究を行った.
(i) 前年度に導入した1ラウンド対話型量子証明系に関する計算量クラスの基本的性質をさらに追究した.このクラスを特徴付ける1ラウンド対話型量子証明系では,「検証者がベル量子もつれ状態を証明者に送付し,証明者が検証者に量子状態を送付する」という形で1ラウンドの対話が実行される.今年度は,この対話の前にさらに定数回の古典情報による対話を許すと当該計算量クラスが変わるのか否かを詳細に解析した.その結果,当該計算量クラスは,そのような変更に対して不変なクラスであることが明らかになった.これは古典の計算量クラスにおける同様の現象の量子版ともいえる現象であり,このクラスの理解を一歩推し進めたといえる成果である.
(ii) 量子計算の古典計算による効率的な模倣の可能性を,「古典計算量クラスにおける多項式階層の崩壊」というありえそうにない帰結に結びつけることにより,「量子計算が古典計算で効率的にはできないことを行っている」という計算量的証左を与える研究を始めた.本研究では,そのような方向性で従来研究において使用されていた量子計算量クラスと異なる量子計算量クラスとして,量子版NPの1つであるNQPというクラスに着目することで,多項式階層の崩壊がより大きなレベルで生じることを発見した.このことは,量子計算の古典計算による模倣不可能性に対するより信頼性のある計算量的証左を与えたことになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子対話型証明系や量子NPに関して,前年度の結果をさらに拡張するとともに,量子NPを量子計算の古典計算による模倣可能性と古典計算量理論における多項式階層の崩壊という関係に応用するという新しい方向性を与えた.
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今後の研究の推進方策 |
1ラウンド量子対話型証明系については,今年度得られた成果をもとにより良い特徴づけを引き続き探究する.量子計算の古典計算による模倣可能性については,量子版NPによる議論の手法を精緻化し,より実現しやすい量子計算に対してこの議論を適用することを目指していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に投稿および発表を計画していた国際会議の開催地(イスラエル)が投稿時の8月に政情が不安定だったため,投稿を取りやめたことが主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
投稿を取りやめた論文は次年度にアメリカで開催予定の国際会議に採択され,発表を予定している.次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と併せてその国際会議への参加費や旅費として使用する予定である.
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