研究課題/領域番号 |
25330021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
河野 泰人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 主任研究員 (40396180)
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研究分担者 |
関川 浩 東京理科大学, 理学部, 教授 (00396178)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子アルゴリズム / フーリエ変換 / 対称群 / 非可換群 / 表現論 / 隠れ部分群問題 |
研究概要 |
初年度は、研究計画書に掲げた「テーマ研究課題1:数式処理を用いた非可換群上のフーリエ変換アルゴリズムの研究」および「研究課題2:非可換群上のフーリエ変換の応用に関する研究」のそれぞれについて、おおむね計画どおりに研究が進展した。 テーマ研究課題1については、対称群上の量子フーリエ変換を実行する最速のアルゴリズムを提案し、計算代数分野のトップカンファレンスISSAC2013(The International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation, June 26-29, 2013, Northeastern University, Boston)で口頭発表として採録され、発表を行った。さらに、量子情報処理に関する国際会議QIP2014(XVII Conference on Quantum Information Processing)でも発表を行った。また、数式処理システムMathematica上で、対称群上のフーリエ変換を実行するシミュレータを作成した。 テーマ研究課題2については、上記のシミュレータを利用し、考案した量子フーリエ変換の最短ベクトル問題への応用を研究した。最短ベクトル問題は、厳密解を求める問題がNP困難として知られている他、条件を緩めることで問題の難しさを調整することができるため、量子アルゴリズムの分野で重要な研究対象となっている。特に、最短ベクトル問題において解が一つしかないという約束をつけた問題は単一最短ベクトル問題と呼ばれ、その問題に対する効率的な量子アルゴリズムの存在は未解決問題として知られている。研究課題1で提案した量子フーリエ変換の単一最短ベクトル問題への応用を研究し、新たな量子アルゴリズムを考案した。この研究によって得られた成果は、現在、発表準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究テーマ課題1に関しては当初の計画以上に進展しており、研究テーマ課題2に関しては年度内に研究成果の発表が間に合わなかったものの、発表準備中であり、計画をほぼ満足していると考えてよい。課題1と2を総合すると、研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。 研究テーマ課題1で初年度に掲げた目標は、対称群上の量子フーリエ変換アルゴリズムを利用して対称群上の古典フーリエ変換アルゴリズムを作り、このアルゴリズムをコンピュータ上に実装することである。先の研究実績の概要で述べたとおり、初年度の成果はこの目標を量的に達成した。さらに、研究成果を口頭発表したISSAC2013が計算代数分野におけるトップカンファレンスであることを考えると、目標を質的にも達成したと判断してよい。 一方、研究テーマ課題2で初年度に掲げた目標は、非可換群上の量子フーリエ変換の応用による、グラフ同型性判定問題またはその部分問題に対する効率的なアルゴリズムの考案である。今年度の成果である単一最短ベクトルに対する量子アルゴリズムの考案は、グラフ同型性判定問題の部分問題に対する量子アルゴリズムに相当する。発表が初年度に間に合わなかったものの、現在、発表準備中であり、当初予定していた計画をおおむね満たしているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初掲げた研究計画と昨年度の研究成果を踏まえて、研究課題1および2に関して、今年度はそれぞれ以下の研究を行う。 研究課題1に関して、初年度に挙げた成果を発展させ、より効率的な対称群上の量子フーリエ変換アルゴリズムを提案する。この成果は、昨年度と同様、計算代数に関する国際会議ISSAC2014(The International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation, July 23-25, 2014, 神戸大学)に投稿中である。また、対称群上の量子フーリエ変換に関する昨年度と今年度の成果を合わせて論文を執筆し、論文誌に投稿する予定である。 研究課題2に関しては、前期に、昨年度得た単一最短ベクトル問題を解く量子アルゴリズムに関する研究成果を論文にまとめ、国際会議に投稿する予定である。また、後期にはこの研究成果を拡張し、非可換群上の量子フーリエ変換のグラフ同型性判定問題または最短ベクトル問題等への応用を目指す。 研究課題1と2を比較した場合、今期は研究課題2に重点をおく。研究対象として、特にNP困難に近い問題を重点的に検討する。昨年度作成した対称群上の量子フーリエ変換を実行するシミュレータと、過去の科研費研究で得たWeyl-Heisenberg群に対する高速な量子アルゴリズムを利用し、新しい量子アルゴリズムの発見を目指す。 研究課題2の重点化により、当初作成した研究計画における研究課題1の2014年度の線表には遅れが生じる。しかし、研究課題1に関しては初年度に十分な成果が得られているため、量子コンピュータの応用上重要かつ興味のある研究課題2に集中することにより、研究テーマ全体として、よりよい研究成果が期待できる。
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