研究課題/領域番号 |
25330021
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
河野 泰人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, 主任研究員 (40396180)
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研究分担者 |
関川 浩 東京理科大学, 理学部, 教授 (00396178)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子アルゴリズム / フーリエ変換 / 対称群 / 非可換群 / 表現論 / 隠れ部分群問題 |
研究実績の概要 |
研究計画2年目にあたる2014年度は、研究計画書に掲げた「研究課題1:数式処理を用いた非可換群上のフーリエ変換アルゴリズムの研究」について初年度に引き続き順調に研究が進展したものの、「研究課題2:非可換群上のフーリエ変換の応用に関する研究」については研究進捗にやや遅れが生じている。 研究課題1に関しては、初年度に発表した対称群上の量子フーリエ変換を実行する量子アルゴリズムをさらに改良し、計算代数分野のトップカンファレンスISSAC2014 (The International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation, July 23-25, 2014, Kobe University, Japan) で発表を行った。この成果は、学術論文誌 ACM Communications in Computer Algebra, Vol 48, No. 3, Issue 189, pp.127-129 (September 2014)に採録された。さらに、本年度までの研究課題1に関する研究成果をまとめ、計算代数分野の主要学術論文誌Journal of Symbolic Computation (Elsevier)に投稿した。なお、本報告書作成時点で、投稿論文は採否通知待ちである。 研究課題2に関しては、研究課題1で作成した量子フーリエ変換の応用方法を研究し、特許出願を行ったものの、国際会議での発表に値する十分満足な結果ではなかったため、年度内の発表を見合わせた。本報告書作成時点で、最終年度での国際会議発表を目指し、引き続き量子アルゴリズムの改良を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究テーマ課題1に関してはほぼ当初の計画どおりに進んでおり、研究テーマ課題2に関してはやや遅れが生じている。課題1と2を総合すると、研究計画に対しては進捗がやや遅れていると判断される。 研究課題1では、2年目以降、1年目の成果の改良と拡張を目標としている。2年目は、1年目に国際会議ISSAC2013で口頭発表した論文の結果を改良し、より高速な対称群上の量子フーリエ変換をISSAC2014で発表した。この成果は米国計算機械学会ACMが発行する雑誌にも採録された。さらに、1年目と2年目の成果をまとめて、海外論文誌に投稿した。投稿した論文誌は、計算代数分野における主要論文誌であり、掲載されれば大きな宣伝効果が得られるのは確実である。研究計画に対して、ほぼ満足な成果を達成したと考えてよい。 一方、研究課題2では、提案した量子フーリエ変換の応用を実現し、国際会議で発表する予定だったが、この目標を達成できなかった。特許は出願したものの、十分に満足できる結果ではなく、国際会議で発表するにはさらに改良が必要だと判断した。無理な対外発表を控えたため、当初掲げた発表計画を下回る結果に終わった。 研究課題1で満足な成果が得られたものの、研究課題2での研究計画未達を補うほどではなく、総合的に見て、研究進捗状況は研究計画よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初掲げた研究計画と昨年度までの研究成果を踏まえて、研究テーマ課題1および2に関して、今年度(最終年度)はそれぞれ以下の研究を行う。 研究課題1に関しては、論文誌Journal of Symbolic Computationに投稿した論文の採否判定と研究課題2の進捗状況に従って判断する。論文が採録されなかった場合は、速やかに論文の修正と他の論文誌への投稿を行う。論文が採録され、研究課題2が順調に進捗した場合、当初の研究計画に従って非可換群上の量子フーリエ変換の効率的なアルゴリズム研究を行う。 研究課題2に関して、昨年度に得た結果を改良し、前期に国際会議QIP(Conference on Quantum Information Processing, Canada, 2016年1月上旬開催予定)への投稿を目指す。また、後期に、国内研究会QIT(Quantum Information Technology Symposium, 2015年11月24-25日開催予定)での発表、および国際会議QIPでの発表を目指す。さらに、後期に、来年度に開催される理論計算機科学系国際会議への投稿も目標にする。 研究課題1と2を比較した場合、昨年度に続き今年度も研究課題2に重点をおく。当初の研究計画通り、非可換群の量子フーリエ変換の応用により、従来量子コンピュータで効率的に解けなかった問題を解く、新しい量子アルゴリズムの発見を目指す。 研究リソースを研究課題2に集中することにより、量子コンピュータの応用上重要かつ意義のある新しい量子アルゴリズム発見に向けて、よりよい研究成果が期待できる。
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