研究実績の概要 |
昨年度に引き続いて凸最大化問題に対し,目的関数の微分情報を用いないで大域的最適解を求めるための確定的アルゴリズムに関する研究を行った.アルゴリズムの骨格は,1976年にHorstによって提案された単体的アルゴリズムと呼ばれる分枝限定法であるが,分子操作にω分割と呼ばれる単体分割規則を用いた場合の収束性はLocatelli-Raberが2000年に証明するまでは未解決となっていた.それ以前からTuyによって,アルゴリズムが生成する入れ子状単体列がある種の非退化条件を満たせばアルゴリズムの収束が保証されることが知られており,収束性が解決した現在ではその非退化条件成立の可否が未解決問題として残っている.これに対して,問題の目的関数のリプシッツ定数を用いた罰金項をアルゴリズムの限定操作で解く緩和問題に導入することで,完璧な答えとはいえないまでも,ある程度はTuyの示唆した論理展開に沿うような収束証明を与えることに成功した.さらに,一度の分子操作で問題の次元の数に等しい子単体を生成する可能性のあるω分割を改訂し,所与の数kの子単体を生成するω-k-分割規則を新たに提案し,k = 2, 3, 4の場合と通常のω分割規則を比較する計算実験を実施し,ω-2分割が他の分割規則よりも収束性のよいことを突き止めた.これらの成果をまとめ,Computational Optimization and Applications誌に投稿,採択され,電子版はすでに公開されている.また,ある種の離散最適化問題を大域的に解く場合の計算量に関して,多項式時間アルゴリズムの存在する部分クラスとNP困難となる部分クラスとの境界を明らかにするための研究にも取り組み,ある程度の成果をあげることができた.
|