研究課題/領域番号 |
25330023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三好 直人 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20263121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 空間点過程 / 確率モデル / 無線通信ネットワーク / セルラ・ネットワーク / 性能評価 |
研究概要 |
近年,無線通信ネットワークの性能評価モデルとして,空間点過程を用いて無線ノードの位置を表した確率幾何モデルが注目されています.これは,無線ネットワークの性能がノードの配置に大きく依存していること,および現実の無線ノードは規則正しく配置されている訳ではなく,地理的な要因等から,一見ランダムに見える配置をしていること等によります.しかし,多くの既存研究では,解析の容易さのために無線ノードが定常ポアソン点過程に従って配置されていることを仮定しています.このことは,無線ノードが互いに独立に配置されていることを意味し,ノードの位置の相関を無視していることになります.本研究の目的は,無線ノードの位置の相関を考慮した,一般的な空間点過程を用いることによって,より現実的な無線ネットワークの確率幾何モデルを考え,その解析を通して無線ネットワークの性能評価を行うことです. 平成25年度は,先行研究で扱ったモデルをより現実的なものとなるように一般化しました.すなわち,基地局の密度や送信信号の強さ等が異なる複数種類の無線基地局を持つセルラ・ネットワークのモデルを考えました.ここでは,先行研究で扱ったジニブル点過程をさらに一般化したα-ジニブル点過程と呼ばれる点過程を用いています.モデル化においては,複数の互いに独立なα-ジニブル点過程を重ね合せることによって複数種類の基地局を表すモデル,および1つのα-ジニブル点過程の点ごとにマーク付けを行うことによって複数種類に分けるモデルの2種類のモデルを考えました.そして,これらのモデルに対して,被覆確率と呼ばれる性能評価指標を数値計算可能な形で導きました.さらに,実際に数値計算をすることによって,セルラ・ネットワークの性能評価を行い,実際にネットワークを設計する際の留意点について考察しました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究実施計画」では,上記「実績の概要」で述べた通り,複数種類の無線基地局を持つセルラ・ネットワークに対して,αジニブル点過程を用いた確率幾何モデルを構築すること,さらに数値計算を通して性能評価を行うことを記載しており,この点については順調に進展しています.一方で,被覆確率と呼ばれる性能評価指標にある種の単調な性質が見られることから,その証明についても言及していましたが,これは現状では困難な状況であり,代替案を考えているところです.
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今後の研究の推進方策 |
基地局がα-ジニブル点過程に従って配置されたセルラ・ネットワークにおいて,被覆確率がαに関して単調であることを示すのは困難かもしれません.しかし,無線ノードの位置の相関がネットワークの性能に影響を及ぼすことは間違いなく,別のモデル,あるいは別の点過程を用いて,この種の問題を考えます. 一方,α-ジニブル点過程を用いたモデルでは,数値計算に多くの時間がかかることが確認されました.そこで,効率の良い近似法を考えることも課題に加えたいと思います.
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