背後過程の状態に依存して客の到着過程とサービス速度が定まる待ち行列に関する研究を行った.過去に考察されてきたこのクラスのモデルの大多数は,背後過程が(待ち行列の状態とは無関係に)マルコフ連鎖を成すと仮定されており,基本的なモデル群に対する統一的な解析手法が知られている.一方,背後過程の状態遷移が待ち行列の状態に依存するモデルはほとんど考察されていない.本研究では,後者のような,背後過程と相互作用する待ち行列の中でも,特に,情報通信ネットワークの性能評価に直接応用可能なモデル群に注目し,このようなモデル群を統一的に扱うことが可能な解析的枠組みの構築と,それに対するアルゴリズム的解析手法の確立を目的とする. 上記の目的を達成するために、背後過程と相互作用する待ち行列モデルの一つであるworkign vacationをもつ待ち行列モデルを考察する際に自然に現れる、M/G/1型マルコフ過程の定常解の計算方法を確立した。さらに、背後過程と相互作用する待ち行列モデルの一つである、待ち客の途中退去がある待ち行列モデルに関する研究を精力的に進めた。まず、前年度に得られた結果を発展させ、同じ到着率、平均サービス時間、ならびに有限の平均最大許容待ち時間をもつ M/G/1+G 待ち行列の中で、M/D/1+D 待ち行列が最小のロス率を持つことを示した。また、MAP/M/c+D 待ち行列ならびに M/PH/c+M 待ち行列モデルにおける定常系内客数分布や定常待ち時間分布を計算するアルゴリズムを開発した。加えて、MAP/M/c+D 待ち行列の特別な場合である PH/M/c+D 待ち行列モデルにおける仮待ち時間分布は、MAP/M/c+D 待ち行列と比較して、格段に簡略化が可能であることを示した。
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