研究実績の概要 |
離散の説明変数を持つロジットモデルは、代数学の用語でローレンス持ち上げといい、そのマルコフ基底の構造が複雑になることが知られている。そのため、説明変数が1つの非常に簡単なモデルを除けば、これまで理論的な成果はほとんど得られていなかった。本研究では、ある種の実用的な計画行列を持つモデルの場合には、説明変数が複数ある場合も含めて、マルコフ基底を明示的に導出できることを示した。また、その結果を用いて、正確分布に基づいた適合度検定のアルゴリズムの導出を行った。さらに、各説明変数の組に対して、1以上の標本が得られているという条件の元では、さらに簡単な構造を有するマルコフ基底の部分集合を用いれば、正確検定を実装することが可能であることを示し、実装アルゴリズムの提案を行った。 離散の非巡回有向グラフが定義し、潜在変数をひとつ含む因子分析型のグラフィカルモデルは、モデルの識別可能性についての理論的な結果がこれまでほとんど得られていなかった。一方、本研究課題の前半において、潜在変数を含むガウスグラフィカルモデルが識別可能であるための十分条件を得ることに成功している(Leung, Drton and Hara(2016))。本研究では、そこでの結果を離散グラフィカルモデルに拡張することを試み、その一部の一般化に成功し、組合せ論的な十分条件を導出した。この条件は多項式時間で検証が可能なので、有用なアルゴリズムと言える。モデルの識別可能性は、代数的なアルゴリズムによって、次元が小さい場合は可能である。そこでその可能な範囲で調べると、今回のアルゴリズムで判定できる識別可能なモデルの割合は必ずしも多くはないこともわかった。この条件の改良が今後の課題と言える。
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