研究課題/領域番号 |
25330039
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
和泉 志津恵 (大久保 志津恵) 大分大学, 工学部, 准教授 (70344413)
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研究分担者 |
玉腰 暁子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90236737)
伊藤 陽一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10334236)
野間 久史 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (70633486)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医薬生物 / ゲノム統計解析 / ビッグデータ活用 / ゲノム疫学 |
研究概要 |
近年,膨大なゲノムデータを用いて,疾病に関連する遺伝子の探索が可能になっている.ケース・コホート研究では,コホート全体ではなく一部の選択された対象者のみから高価なゲノム情報を測定することにより,研究のコスト・労力が大幅に節減できる.しかし,対象者から観測されるデータには頻繁に欠測値が含まれるため,データ解析に困難を伴う.本研究では,欠測を伴うコホートデータに対応した,ケース・コホート研究の新規な理論的枠組みの開発を行い,提案方法の特性を数値実験により検証し,汎用プリケーションを開発し,国内外の大規模なゲノム疫学研究への提案方法の応用を検討することを目的とする. 平成25年度(初年度)は,欠測データに対応した,ケース・コホート研究の新規な理論的枠組みの開発を行った.コホートでの欠測の発生メカニズムをMissing at random と仮定した.その仮定のもと,Breslow & Chatterjee (1999)により提案されたTwo-phase studyの枠組みを拡張して研究効率の高い,新規なサンプリングデザインを検討した.本研究にて提案する新たなサンプリングデザインを考慮して,それに対応する統計解析の方法を検討した.また,RやSASなどの統計解析向けプログラミング言語を用いた数値実験により,JACC Studyなどの大規模コホート研究データに基づいて仮想データを作成し,その仮想データを用いて,本研究について開発するデザインと解析方法の有用性の評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度(初年度)の研究計画の概要は,(1)欠測データに対応した,ケース・コホート研究における新規なサンプリングデザインの開発を行っていく.(2)新たなサンプリングデザインを考慮した統計解析の方法を検討する.(3)JACC Study などの大規模コホート研究のデータを用いて,RやSASなどの統計解析向けプログラミング言語において数値実験を行い,実践における有用性の評価を行う.であった.まず,(1)については,子どもの健康と環境に関する全国調査(環境省エコチル調査)の元となった北海道研究(北海道スタディ)のデータを参考にして,欠測のパターンを分類し, Multi-phase抽出法について検討した.研究分担者や研究協力者から得られたコメントに基づき,サンプリングデザインの修正や改良をさらに検討した.(2)については,解析方法として,抽出確率の逆数を重みに用いた部分尤度法,推定された重みを用いた部分尤度法,多重代入法のうちMultiple Imputation by Chained Equations (MICE)について検討した.加えて,因果推論的なアプローチであるStructural Mean Models,多段階発がん過程に基づく数理モデル,経時データに対する変化係数を用いたモデルについても検討した.(3)については,JACC Studyや北海道スタディのデータの特性を参考にして仮想データを作成し,RやSASなどの統計解析向けプログラミング言語を用いた数値実験を行い,欠測のパターンごとの母数の推定値のバイアスについて評価した.加えて,(1)と(2)に関連して,標本数(サブコホートサイズ)と検出力との関係について,モンテカルロ法を用いた数値実験により調べた.これにより,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,平成25年度までの研究:(1)と(2)の修正と改善を行いながら,新たに開発した,新規なサンプリングデザインと統計解析の方法に基づく,標本数の設計方法を構築し,数値実験により提案方法を検証する.加えて,提案方法に対する汎用アプリケーションを開発する.具体的には, (4)標本数の設計方法の構築:Izumi & Fujii (2010)による方法を拡張して,新規なサンプリングデザインと新たに開発した統計解析の方法に基づく,標本数の設計方法を構築する. (5)数値実験による標本数の設計方法の検証:数値実験により,標本数の設計方法の特性を検証する. (6)アプリケーションの開発:提案方法に対する汎用アプリケーションをRやSASなどの統計解析向けプログラミング言語を用いて開発し,IT を活用してWeb 上で研究内容やアプリケーションに関する情報を発信する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者等との研究打ち合わせにおいて,実際のface-to-faceの会議に加えて,ビデオ会議システムやクラウド型コラボレーションツールを活用したネット会議を持つことにより,十分な議論をおこなうことができた.その結果、当初の予定よりも旅費を使用する回数が少なくなったため,旅費について残高が生じた.また,数値実験による提案方法の有用性の評価において,予定していた大学院生の研究補助を必要な期間に得ることが出来なかったことから,人件費・謝金について残高が生じた. 平成26年度は,平成25年度と同様に,引き続き円滑に研究を進める.そのために,平成26年度の研究費に対して,以下のような使用計画を立てている.旅費として,国内学会での成果発表や研究打ち合わせのための国内旅費,および国際学会での成果発表のための外国旅費を計画している.なお,外国旅費には,平成25年度の残高を活用する.謝金として,研究補助のための大学院生への謝金や文献複写への使用を計画している.その他として,ソフトウェアの更新費や学術大会への参加費としての使用を計画している.
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