研究課題
近年,膨大なゲノムデータを用いて,疾病に関連する遺伝子の探索が可能になっている。ケース・コホート研究では,コホート全体ではなく一部の選択された対象者のみから高価なゲノム情報を測定することにより,研究のコスト・労力が大幅に節減できる。しかし,対象者から観測されるデータには頻繁に欠測値が含まれるため,データ解析に困難を伴う。本研究では,欠測を伴うコホートデータに対応した,ケース・コホート研究の新規な理論的枠組みの開発を行い,提案方法の特性を数値実験により検証し,汎用プリケーションを開発し,国内外の大規模なゲノム疫学研究への提案方法の応用を検討することを目的とする。平成27年度(3年度目)は,平成25年度および26年度に開発した(1)新規のサンプリングデザイン,統計解析の方法,加えて標本数(サブコホートサイズ)の設計方法,(2)数値実験により検証された提案方法の特性,(3)統計解析ソフトウェアRでの汎用的なアプリケーションを用いて,(4)ゲノム疫学研究への応用を試みた。分子疫学研究者へ既存の方法に併せて提案方法を解説し,大規模なゲノム疫学研究におけるサンプリングデザインを含む研究計画を作成した。その際,乳幼児を対象とした北海道スタディやエコチル調査のように,コホート内の多数の対象者における反応変数の値が欠測となると事前に分かっている場合,提案方法の代わりに,反応変数の値を補完する多重代入法(Muletiple Imputation)の方が適切となる可能性がでてきた。そこで,多重代入法を用いるアプローチのもとで,サンプリングデザインを検討した。
3: やや遅れている
平成27年度(3年度目)の研究計画の概要は,(1)数値実験による検証結果に基づいて,大規模なゲノム疫学研究への提案方法の応用を検討する,(2)本研究において開発する方法と数値実験による検証結果をまとめ,学術会議での成果発表や研究論文の投稿を行う,であった。まず,(1)については,大規模なゲノム疫学研究におけるサンプリングデザインを含む研究計画を作成し,提案方法の応用を試みた。その際,乳幼児を対象とした北海道スタディやエコチル調査のように,コホート内の多数の対象者における反応変数の値が欠測となると事前に分かっている場合,提案方法の代わりに,反応変数の値を補完する多重代入法(Muletiple Imputation)の方が適切となる可能性がでてきた。加えて,共変量の分布を得るために,反応変数の値が欠測となることが事前に分かっている対象者から抽出されたバイオサンプルを利用することが,研究現場では受容されにくい考え方であることが分かった。そこで,当初の計画通り進まない際の代替え案として用意していた,多重代入法を用いるアプローチのもとで,サンプリングデザインを検討した。次に,(2)については,今回開発した方法と数値実験の結果をまとめた。以上の経緯により,研究はやや遅れていると言える。
平成28年度は,平成27年度までの研究成果をもとに提案方法の修正や改善を行いながら,(1)大規模なゲノム疫学研究への提案方法の応用,(2)本研究において開発する方法と数値実験による検証結果をまとめ,学術会議での成果発表や研究論文の投稿を行う。具体的には,(1)について,多重代入法を用いるアプローチについて引き続き検討する。(2)について,2016年7月に開催される国際計量生物学会会議(IBC2016)において研究成果を発表することに加え,研究論文を投稿し,本研究を総括する。
平成27年度の研究計画を実施するために必要となった物品,研究打ち合わせや研究成果の発表を行うための旅費,学術大会への参加費などにより,当該年度の支払い金額をおおむね計画通り執行した。しかしながら,現在までの進捗状況がやや遅れていることもあり,残高が生じた。
現在までの進捗状況がやや遅れているため,補助事業期間を1年延長し,平成28年度に研究を総括する。これまでの未使用額分の活用について,以下のような使用計画を立てている。旅費として,研究分担者:玉腰・伊藤(札幌)や連携研究者:コローン・佐藤・竹内(広島,京都,東京)との研究打ち合わせのための国内旅費,および国際学会(カナダ)での成果発表のための外国旅費での執行を計画している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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