研究課題/領域番号 |
25330043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
今野 良彦 日本女子大学, 理学部, 教授 (00205577)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウィシャート分布 / 統計モデル / 低ランク行列 / 推定問題 / 検定問題 / 縮小推定量 / 分散共分散行列 |
研究概要 |
観測変数間に相関がある多次元のデータの統計的解析の手法と理論の体系である多変量統計的解析は,1959 年に刊行された T.W. Anderson による成書を基礎として,その手法の体系と理論は精緻化や一般化が行われてきた.一方,計算機の計算能力やデータ収集・蓄積能力の飛躍的な向上により,標本数よりも観測変量の次元が大きなデータ(いわゆる高次元データ)やT.W. Anderson の著書にある古典的なアプローチ(古典的なアプローチという)を超えた複雑な構造を持つデータに対する統計手法が様々なアプローチから提案されている.これらのデータに対する統計手法の導出とその最適理論を考える上で,古典的なアプローチでは未解決な本質的な困難が存在する.データ間の相関構造を推測するための統計量である経験分散共分散行列が特異(その行列式がゼロになり,逆行列を持たない)となることである.さらに,スパースな大規模母数行列をいかに adaptive に推測するかという点である. これらの困難を解決するための統計手法の構築と手法の精度評価を目的とした研究は,現代統計科学のひとつの大きな流れとなっている.本研究では,近年の計算機環境の劇的な変化を見据えつつ,分野横断的な数理理論を援用し,行列値統計量に関わる統計的決定理論の深化を目指した.本年度は,等質錐(推移的な作用群をもつ凸錐体)に値を取る分布としてウィシャート分布族を非常に見通しよく拡張されている Graczyk and Ishi (Journal of the Mathematical Society of Japan, 2013) を基にして,ウィシャート分布の母数に関わり個別に扱われてきた検定統計量の漸近分布論を統一的な観点から考察する研究を進め,その結果をまとめた論文を準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の (1) 及び (2) については,等質錐上のウィシャート分布理論に基づき尤度比検定統計量の漸近分布に関する一般理論に関わる論文を準備中である.研究目的の (3) については,2014 年度以降の課題として検討予定である.研究目的の (4) については,着想をより深化させる段階である.研究目的の (5) については新たな着想を検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
特異なウィシャート行列に関する部分積分の公式を Konno (J. Multivariate Analysis, 2008) は導出した.これにより,経験分散共分散行列の一般化逆行列の期待値の評価が可能になった.これは,実多変量正規モデルだけでなく複素多変量正規分布モデルも含む結果である.この結果を用いて,経験分散共分散行列が特異な場合の実および複素多変量正規分布の平均ベクトルの縮小推定量やベイズ推定量を導出することを目指していく.研究を推進するために,研究動向に関する情報を収集していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定をしていたパーソナルコンピュータの購入および出張を見送ったために,未使用分が出た. 卓上型および可搬型パーソナルコンピュータを購入し,研究情報収集のための出張を計画している.さらに,研究動向を調査するために図書を購入予定である.
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