研究実績の概要 |
観測変数間に相関がある多次元のデータの統計的解析の手法と理論の体系である多変量統計的解析は,1958 年に刊行された T.W. Anderson による成書(最新版は 3版)を基礎として,その手法の体系と理論は精緻化や一般化が行われてきた.一方,計算機の計算能力やデータ収集・蓄積能力の飛躍的な向上により,標本数よりも観測変量の次元が大きなデータ(いわゆる高次元データ)やT.W. Anderson の著書にある古典的なアプローチ(古典的なアプローチという)を超えた複雑な構造を持ったデータに対する統計手法が様々なアプローチから提案されている.これらのデータに対する統計手法の導出とその最適理論を考える上で,古典的な多変量解析にはない.本質的な困難は,データ間の相関構造を推測するための統計量である経験分散共分散行列が特異(その行列式がゼロになり,逆行列を持たない)であることに起因する.さらに,スパースな大規模母数行列をいかに adaptive に推測するかという問題が Compressed sensing の観点から注目されている.本研究では,近年の計算機環境の劇的な変化を見据えつつ,分野横断的な数理理論を援用し,行列統計量に関わる統計的決定理論の深化を目指し研究を行った.その結果以下の成果を得た.(1) 両側切断データとは, 左側切断と右側切断が起こるデータのことである. この両側切断のデータのもとで, 未知の分布関数の Nonparametric Maximum Likelihood 推定量を self-consistency algorithm によって求める方法を提案し, 漸近的な挙動についての評価を与えた. (2) 両側切断データのもとで, Special exponential 分布族の未知母数の最尤推定量についての漸近的挙動についての評価を与えた.
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