Hattori and Henmi (2014)で提案した層別二重頑健推定量は、二重頑健推定量に傾向スコアによる層別解析を組み合わせることで、多重頑健性を得る方法である。傾向スコアによる層別解析は広く用いられている方法であるが、一致性の厳密な証明が確立しておらず、理論的に妥当な分散推定量も得られていない。層別二重頑健推定量も傾向スコアによる層別解析に依存しており、理論的な正当化が残されたままであった。研究代表者は在外研究として2014年度にワシントン大学生物統計学部に滞在したが、ホストであるZhou教授が層別解析の正当化に取り組んでいることを偶然しり、共同研究を開始した。Zhou教授らの理論は標準的な傾向スコアによる層別解析を対象にしたものであるが、その多くの部分が層別二重頑健推定量に拡張が可能であることが確認され、その検討を実施した。Zhou教授らの理論では漸近正規性の証明がなされていないが、Hattori and Henmi (2014)での理論との組み合わせにより実現できないかを検討した。現在のところ証明は完了しておらず、現在も検討を継続している。 他の方法として、Nomura and Hattori (2016)は、複数の傾向スコアモデルの候補を設定し、クラスタリングと層別解析を組み合わせることで多重頑健推測を実現する簡明な方法の提案を行った。成果を投稿し、現在は改訂作業を行っている。
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