研究課題/領域番号 |
25330050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
藤澤 洋徳 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (00301177)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非対称分布 / 自然な歪度 |
研究概要 |
統計分布としては正規分布をはじめとして様々な分布が存在する.しかしながら,左右非対称な分布でハンディなものは,実はそれほど多くはない.21 世紀に入ってから非対称分布の研究が盛んになってきており,特に Jones (2009) が提案したアイデアは画期的であった.ところが,Jones の分布は,単峰性や分布の柔軟性は確保しているものの,それぞれのパラメータの説明力が今一つであった.その問題点をクリアに克服したのが我々の論文 (Fujisawa and Abe, 2012) である.本申請研究では,このアイデアを使って多次元の非対称分布への拡張を考え,さらに,ハンディなパラメータ推定の方法などを提案したい.また,金融工学におけるコピュラの非対称分布版も本当に近年になって研究が始まっており,それへの応用も視野に入れたい. まずは,我々の一次元の論文を,雑誌に載せることを試みている.国際会議などでは,他の研究者からきちんと評価されており,テクニカルレポートの段階でも,他の著者に引用などされているのだが,論文を雑誌に掲載するまでには至っていない.まずはこれをうまく行うことが当面の課題である. そのアイデアを基にした非対称分布の多次元化はうまく行うことができた.特に,歪度パラメータが増えると分布の歪度も単調に増えることを,ある種の自然さできちんと示せたのは初めてだと考える.その他にも過去の最も有名なAzzalini型の多次元非対称分布の問題点をクリアしている.数値実験でも我々の多次元非対称分布の良さを検証した.テクニカルレポートにもまとめたところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多次元非対称分布の構築はうまく行ったと考えている.自然な歪度を定義して,その歪度に関しての単調性まで証明できた.そのような結果は多次元分布では初めてであると考えている.その部分に関しては想定以上にうまく進んでいると考えている.しかしながら,研究の基本となる一次元版の論文を雑誌に掲載させることに,思いのほか時間がかかっている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度早々に,本申請研究に非常に深く関係がある分布論に特化した国際研究集会に参加する予定である.分布論の著名な研究者が大勢集まる研究集会である.そこで意見交換をすることで,研究の更なる進展を考えたい.特に,円周上の分布に関連した研究者が多く参加しているので,円周上の分布への発展も視野に入れたいと考えている.また,その他にも,国際研究集会に参加することを検討しており,そこでも意見交換を行いたいと考えている.平成26年度は,これまでに得た成果を土台として,当初に想定していた研究テーマも含めて,さらなる発展の契機となる年度としたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,当初に想定したよりも研究が進まなかったためと,次年度に当初に予定していなかった分布論の大きな研究集会に参加できることになり,それへの旅費に充てることも考えたからである. 本申請研究に非常に深く関連がある分布論に特化した国際会議,多くの特別講演が予定されているIMSのアジア地域最大規模の国際会議である IMS-APRM,計算機統計の中心的な国際会議である CompStat,に参加する予定である.また,国内の幾つかの学会や研究集会に参加したり,研究に関して具体的に議論を行うために他大学などを訪問する予定である.また,研究が進展するにつれて必要となる新たな知識獲得のために,研究に必要な書籍なども購入予定である.
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