本研究課題では、膨大な数の遺伝子間相互作用に対して表現形との関連を調べるための多重検定法の開発を行った。検定の多重性を統計的に評価する方法に関しては、各検定が独立であればFDR(false discovery rate)で評価する方法などが利用できるが、遺伝子間相互作用のように検定ごとに高度に相関がある場合は評価が難しい。これに対して、計算機シミュレーションによってFDRを評価する方法を開発し、抗がん剤副作用に関連するSNPの組み合わせの探索に適用した。計算時間がかかり、PCでは数日かかってしまうが、簡易な方法に比べて高い検出力が得られるため、意義があると考えられる。また、これをマイクロアレイデータに基づく遺伝子間相互作用の高速な探索法へと応用し、アルゴリズムの開発を行った。 27年度は、遺伝子発現データに対してクラスタリングと関連遺伝子の選択を同時に行うLassoクラスタリング法を応用し、乳がんのサブタイプの一つであるbasal-like症例についてさらなる分類を試みた。公開されている乳がんマイクロアレイデータ約3600例を用いてクラスタリングを行い、臨床的に特徴のある3群に分かれ、関連する遺伝子を抽出することができた。また、関連する遺伝子の組み合わせを高速に探索する方法に関しても検討した。 遺伝子間相互作用のプログラム開発に関しては、公開に向けた各種プログラムの整備を行い、汎用的に解析が行えるような準備を行った。
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