近年のプロセッサにおいては、1つのプログラムの実行(単一スレッド実行)における実行時間はほとんど短縮されず、性能向上はほぼ停滞している。この原因は、いわゆる2つの壁による:メモリの壁と電力の壁。 これまで、メモリの壁を克服する方式として、動的命令ウィンドウリサイジング(DIWR: dynamic instruction window resizing)を提案してきた。DIWRはメモリレベル並列を利用し大きな性能向上を達成することができることを示したが、電力が増加するという問題があった。そこで、今年度は使用できる電力を制限したときに、性能向上がどこまで押さえられるかを評価した。その結果、電力制限がないときに比べると電力制限がある場合、性能が抑えられるが、現実的な電力制限の下では、依然として十分な性能を達成することがわかった。成果はジャーナル論文として発表した。 このほか今年度は、電力の壁を克服するフロント実行方式と呼ぶ方式の研究成果をジャーナル論文として発表した。 研究期間を通しては、以下の成果をあげた:(1)メモリの壁を克服する方式であるDIWR方式を提案し、コンピュータアーキテクチャの分野で最も権威のある国際会議に論文が受理され、発表した。(2)電力の壁を克服する方式である2段階タグ比較方式を提案し、2013年先進的計算基盤システムシンポジウムで発表し、最優秀論文賞を受賞した。(3)そのほか発表した論文の共著の学生が、2015年情報処理学会計算機アーキテクチャ研究会若手奨励賞、同年同学会コンピュータサイエンス領域奨励賞、同年同学会システムアーキテクチャ研究会若手奨励賞を2つ受賞した。
|