平成27年度に実施した研究の成果は,主に次の2点である.(1)ハザードを考慮したゲート信号線の遅延故障の診断法を開発した.(2)ハザードを考慮したクロック信号線の遅延故障の診断法を開発した. 我々が平成26年に発表した遅延故障の診断においては,信号線の論理値と信号の最終変化時刻を計算することによって,遅延故障のシミュレーションを行っていた.そのようなシミュレーションでは,一時的に信号が変化するハザードを正確に表現することができず,実際の回路でハザードが発生する場合には,シミュレーションと異なる結果となる場合がある.そこで,シミュレーションで用いる論理値を拡張し,ハザードも表現できるようにした.ただし,正確な信号波形計算を行った場合には,計算時間が長大になるため,実用的な計算時間でシミュレーションが行えるような工夫を取り入れた.開発した手法を用いてベンチマーク回路に対して実験を行った結果,(1)の研究では,単一故障に対しては1~20個の候補故障に,2重故障に対しては,11~41個の候補故障に絞り込むことができた.(2)の研究では,単一ゲート遅延故障とクロック遅延故障に対して,8~105個の候補故障に絞り込むことができた. 研究期間全体を通じた研究の成果は主に次の2点である.(1)クロック信号線の遅延を考慮したゲート遅延故障に対する故障診断法を開発した.(2)ハザードを考慮した様々な遅延量を持つ遅延故障に対する故障診断法を開発した. (1)の研究においては,組合せ回路部分のゲート遅延とクロック線の遅延が同時に存在する場合を考慮した故障診断法を開発した.また,(2)の研究においては,(1)の手法を拡張し,信号値が一時的に変化するようなハザードの影響を考慮した,遅延故障の故障診断法を開発した.
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