研究課題/領域番号 |
25330071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
永山 忍 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (10405491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再構成可能デバイス / 多次元ディジタル波形信号合成器 / 多変数数学関数回路 / 多次元離散データ / 設計自動化 / 高位合成 |
研究概要 |
プログラマブルな多次元ディジタル波形信号合成器とその設計自動化ツールの開発を最終目的とし,平成25年度は,合成器の多次元化への初期段階として以下の研究を行った. 1.数学関数回路の多変数化,および評価実験 波形信号合成器の多次元化への初期段階として,まずは合成器の中心的な部品である数学関数回路の多変数化について研究を行った.先行研究で開発した数学関数回路は,理論的には多変数に拡張可能であるため,多変数化すると回路サイズや性能がどのように変化するかを実際の評価実験により調査したところ,当初想定していた最悪の状況通り,回路サイズが次元の増加とともに爆発的に(指数関数的に)増加してしまうため,理論通りの単純な多変数化では実用的な多次元合成器が得られない(小規模な合成器しか設計できない)ことがわかった.そこで,当初の計画通り,決定グラフを用いた回路サイズの縮小を試みたが,次元の増加による回路サイズの増加を決定グラフによる圧縮では十分に抑えることができず,残念ながら期待した効果を得ることができなかった.これらの研究結果から,多次元化には,小手先の圧縮技術だけではなく,回路構成の根本的な改善が必要であることが明らかになった. 2.多次元離散データから多次元波形信号を生成するための手法の考案 数学関数として定義されていない観測データや実験データなどの離散データに対しても波形信号合成器を自動生成できるように,その設計手法の考案も上記研究と並行して行った.その結果,与えられた多次元データをまずは多変数スプライン補間関数により連続関数へと変換し,その連続関数をマルチリニア補間関数により区分的に近似することで,与えられたデータに対して自然で滑らかな波形信号を少ない計算量で生成することに成功した.生成した波形信号の関数を数学関数回路で実現すれば,離散データから合成器を直接自動設計できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は当初の計画通り進めており,得られた研究成果の一部が国際会議で表彰されるなど,成果も高く評価されているため,成果だけを見ると,おおむね当初の計画通りの進展状況あるいは,それ以上と言えるかもしれない. しかし,多変数数学関数回路に関する研究が想定の範囲内とはいえ,最悪のシナリオで進んでいるため,当初予定していた平均的な進展状況よりは,やや遅れ気味と評価している.新型の数学関数回路の設計は,次年度の研究課題に含む形で研究計画を立てていたので,当初の計画を見直すほどの大きな支障は出ていないが,研究者自身が満足のいく成果とは言い難いため,やや遅れ気味と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ研究計画を見直すほどの大きな支障は出ておらず,ほぼ当初の計画通り研究を進めているが,「現在までの達成度」の欄で述べたように,当初想定した範囲の最悪のケースで研究が進んでいるため,次年度は,現在までとは別の手法による数学関数回路の多変数化にチャレンジする必要がある. もともとこのような遅れ(最悪のシナリオ)を想定し,それを吸収できるように,ある程度ゆとりを持った計画を立てていたため,次年度の主な計画を見直す必要は無いが,時間的な制約から,評価実験の対象を任意の次元ではなく,当面は3次元(3変数)に絞って研究の進行速度を速める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
見積価格等の誤差により生じた単純な残金であり,残額(5円)が小額過ぎて前年度には執行不可能だったため. 残額が小額ではあるが,次年度の予算と合算して使用する予定である.
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