研究課題/領域番号 |
25330077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中谷 多哉子 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (30431662)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 要求変更 / 要求獲得 / 要求の可変性 / 要求獲得容易性 / 多層型シナリオ分析 / ユーザ経験の分析 / ステークホルダの社会的環境 |
研究概要 |
要求の安定性,および要求源泉へのアクセス性が要求獲得に与える影響を定量的に分析し,定量尺度として,要求分析者から要求源泉へのコミュニケーション経路に基づいたアクセス容易性を新たに定義した.また,要求源泉へのアクセス容易性と既定義の要求の安定性が.要求の獲得容易性に与える影響を重回帰分析を用いて明らかにした.この成果は,電子情報通信学会英文論文誌に採録され,2014年5月に発行される予定である. また,要求を分類するためのルールを開発し,時系列で要求の分類ごとの獲得数を集計するツールを開発し,評価した.この成果は要求工学ワークショップで発表した後,ソフトウェアシンポジウムで論文を発表し,現在,学会論文誌への投稿準備中である. さらに,ステークホルダを取り巻く社会環境の分析と,ドメインで使われる概念の分析を行うことで,要求が変更されるプロセスを明らかにする手法を開発した.この手法は,2度の要求工学ワークショップ,および2度の電子情報通信学会知能ソフトウェア工学研究会で発表を行い討論した後,ACCPM2014で論文発表を行った.今後は,引き続き事例の調査を進め,社会的要因による要求変更が発生する仕組みを分析する予定である. 不要な要求変更を防止するためには,十分なユーザ経験を分析する必要もある.デンソーの車載器やセンサーを開発している技術者の協力を得て,ユーザ経験を分析した.ユーザ経験を分析するにあたり,シナリオ,ユーザの主観的な感情,システムの機能(サービス),および,ユーザまたはシステムを取り巻く環境を多層化シナリオとして分析し,相互の依存関係を時系列で表現する手法を開発した.この成果は,ICSOFT2013で発表した.この論文は,Selected Paperとなり,Springerの論文誌に現在,投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の内容は以下の通りであった.1)要求獲得に影響を与える要素を明らかにする.2)要求の依存関係を明らかにする.3)要求の分類ルールを構築する. 1)は,電子情報通信学会の論文誌に論文が採録されたことから,目標を達成することができた.3)は,ソフトウェアシンポジウムで論文発表を行った.現在,学会論文誌への論文投稿を準備中であり,目標を達成できた. 2)は,当初,設計制約を考慮した要求の獲得順位を定めるために,機能要求と非機能要求の依存関係を明らかにすることを計画していた.しかし,モデル化を行うドメインは,要求に影響を与える要素を網羅していなければ,依存関係そのものを分析することができない.そこで,本年度は,これまでの要求分析で行われていたステークホルダ間の依存関係だけではなく,ステークホルダを取り巻く社会的環境にまで視野を拡げ,その結果が,要求獲得にどのような効果を与えるかを分析することにした.これは,新たな要求獲得の視点であり,従来のステークホルダ中心,あるいは概念モデル中心の要求獲得とは異なる.ただし,社会的環境を分析するだけでなく,問題ドメインの概念モデルを開発することが,可変な要求を発見するために効果があることは,実証的に示すことができた. 以上のように,2)の計画は一部のみの達成に留まったが,研究の異なる視点,領域を発見し,研究を進めることができたことから,本研究はおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,社会的環境の分析が,どのように要求獲得に影響を与えるかを引き続き,事例を収集して分析する.また,要求獲得プロセスを観測するための環境と観測ツールの開発に関しては,このツールを開発するにあたり,既に開発が終わっている要求獲得履歴を可視化するためのツールをプロトタイプとして用いることを決定している.開発する予定のシステムの要求仕様書を作り,要求仕様書の変更履歴に分類ルールを適用して要求の獲得履歴を観測することで,要求獲得プロセスの可視化および観測ツールの仕様を定め,漸進型開発を行う.
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