研究課題/領域番号 |
25330077
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
中谷 多哉子 放送大学, 教養学部, 教授 (30431662)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 要求工学 / 要求獲得プロセス / プロジェクト管理 / プロセスの可視化 |
研究実績の概要 |
漸進型要求獲得プロセスの可視化および予実管理支援システムの開発において,検討を行った.これまで,要求獲得を漸進的に行うために,指数型成長曲線,遅延S字型成長曲線,および学習型成長曲線といった3種類の成長曲線を当て嵌めて,計画を立案し,要求獲得を行った過程を可視化するシステムの試作を行ってきた.これまでに調査した要求獲得過程のデータに基づいて各種成長曲線への統計的な説明可能性について検証を行った結果,学習型,すなわち,要求の発生から獲得までに学習時間を要するという過程は観察できなかった.以上の活動によって,要求獲得プロセスの予実管理を行うためには,遅延S字型を用いて計画を表し,実績は計画に対する比較可能な可視化を行う必要があることを明らかにすることができた. 支援システムは,プロジェクト管理システムのオープンソフトウェアであるRedmineおよびRを統合したシステムである.漸進型要求獲得プロセスは,要求種別,あるいはサブシステムといった単位で要求獲得の過程を管理される必要がある.この点は,プロジェクト管理システムとの相性がよい.本支援システムは,要求獲得プロセスが定量的に管理可能な状況となる点,要求獲得における会議の議事録のデータを支援システムに登録することによって,その後の追加,変更,削除が管理対象となる点,さらに,要求獲得プロセスの管理対象がプロジェクトの開発内容に合わせて対応させることが可能である点に有効性がある. 現在,RedmineとRとの統合がほぼ終了し,計画の可視化の実装も完了した.現在,動的に変化する実績データを計画データと共に表示するための多様な表現方法を検討中であり,随時実装を進めている. 以上のツール開発を行う一方で,要求獲得のスコープを分析する手法を開発した.この開発は,当初の予定には含まれていない内容である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では,要求獲得の可視化を3種の成長曲線に当て嵌めることで,要求獲得プロセスの実績が計画と合致していること,あるいは遅延していることを示せると考えていた.しかし,成長曲線へ当て嵌めるためには,明確な要求獲得プロセスの終了時期が必要である.実際のプロジェクトで得られたデータを参照すると,要求獲得プロセスは漸進型に進む場合だけではなく,システムの開発進捗に合わせて,中断と再開が繰り返されることが明らかとなった.そのため,ツールによって支援する内容が変わり,実績データの多様な可視化に重点を移すこととなった.多様な可視化では,ツールの試作に対して技術者との討論を繰り返し,仕様を決めていく必要があった. そのため,ツール開発事例を論文としてまとめる時期が遅延した.
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今後の研究の推進方策 |
現在開発中の支援システムを8月までに完了させ,学会誌への論文投稿を予定している. 要求分析のスコープに関する論文は,現在,学会誌への投稿を完了させ,査読中であり,平成28年度中には採録される予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文を投稿したのは,電子情報通信学会の特集号論文誌である.この論文誌は現在査読中であるが,発行は平成28年度の9月に予定されている.そのため,残額をこの論文の別刷り代(掲載料)が必要である.また,本研究の集大成を国際会議論文として発表するための旅費も必要である.
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次年度使用額の使用計画 |
・電子情報通信学会特集号論文誌論文掲載料:25万円(9月に支出) ・国際会議への論文発表:約26万円(1月出張予定)
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