研究課題/領域番号 |
25330080
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
鵜川 始陽 高知工科大学, 工学部, 准教授 (50423017)
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研究分担者 |
岩崎 英哉 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90203372)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ガベージコレクション / 並行GC / Jikes RVM / マルチコア / コンパクション |
研究実績の概要 |
本研究では,複数のCPUコアを搭載した組込みシステムを対象にして,アプリケーションソフトウェアの動作を妨げないガベージコレクション(GC)を開発している.課題のひとつは(1)アプリケーションが使っていないコアを活用してアプリケーションと並行してGCを行う並行GCの新しい方式を開発し,アプリケーションと並行に実行できない処理を削減することと,停止時間やGCのために余分に必要になるメモリの量を見積れるようにすることである.もうひとつは,(2)コンパクションを行うことでメモリフラグメンテーションを解消して,長時間実行し続けるアプリケーションでも安定して動作するようにすることである.さらに,(3)GCにより消費される電力を削減することである.これらの課題を解決するGCを開発しAndroidの仮想機械(VM)であるARTに実装して評価を行っている.今年度の成果は以下の通りである. (1)本研究で開発している並行スナップショットGCをARTに実装して性能を評価した.並行スナップショットGCでは,アプリケーションを無制限に停止する必要がない代わりに,処理を繰り返えして収束させる必要がある.停止時間が短かくなったこと,実際にはすぐに収束し,繰返しは問題とならないことを確認し,国内の会議で発表した. (2)本研究では既存の並行コピーGCであるSapphireアルゴリズムをコンパクションに応用する予定である.昨年度に引き続きSapphireアルゴリズムを研究用Java VMであるJikes RVMに実装し,アルゴリズムの検証と洗練を行っている.成果を国際会議で発表した. (3)GC中にCPUの動作周波数を下げることで,あまり性能を落とさずに効果的に消費電力を下げる手法を研究している.実際のスマートフォンで効果を確認した.また,世代別GCに適用する方法を国内の会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
並行スナップショットGCの実装は予定通り進捗している.コンパクションはAndroidへの実装が遅れているが,これは本年度中にAndroidの新しいバージョンがリリースされ,これまでと全く異なるVMが使われるようになったためである.Jikes RVM上でのアルゴリズムの検証と洗練は順調に進んでおり,来年度に実装できると考えている.消費電力の削減は当初は予定していなかった項目であるが順調に進展している.以上より,全体としてはおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
遅れているコンパクションのAndroidへの実装に研究資源を多く配分する.具体的には,コンパクションアルゴリズムの基本部分の実装を代表者と共同研究者が分担して行う.また,ミーティングの頻度を月1回に増やして,連携を緊密にすることで研究を加速させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は組込みシステム向けメニーコアプロセッサの機種選定と購入を予定していたが,検討の結果,組込みシステム向けのメニーコアプロセッサの普及が当初の見込より遅いため購入しないことにした.この予算の一部は,当初は予定していなかったが成果が見こめる消費電力削減のための実験機材の購入にあてた. また,海外の研究者の訪問を予定していたが日程が合わず延期している.
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次年度使用額の使用計画 |
延期している海外の研究者の訪問と研究プロジェクトのミーティング頻度を増やすための費用に当てる.
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