研究課題/領域番号 |
25330086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
光来 健一 九州工業大学, 情報工学研究院, 准教授 (60372463)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 仮想化技術 / クラウド / マイグレーション |
研究概要 |
今年度は、ホストVM間の瞬間マイグレーション(課題(1))とセキュリティVMの柔軟なマイグレーション(課題(2))に取り組んだ。 課題(1)については、VMの中でVMを動作させる技術(ネステッドVM)に対応した仮想化ソフトウェアのXen-Blanketを用いることを検討したが、その過程でアーキテクチャ上の問題が見つかった。そこで、ネステッドVMを実験的にサポートし始めたXen 4.2を用いることにした。ホストVM間でゲストVMのメモリをスワップする機構を実装し、それを用いたマイグレーションを開発した。実験の結果、開発したマイグレーション手法はゲストVMのメモリのサイズにあまり依存せずにマイグレーションを行えることが分かった。768MBのメモリをもつゲストVMをマイグレーションすると、従来のマイグレーション手法と比べて40%高速化できた。 課題(2)については、セキュリティVMがリモートの監視対象VMのカーネルメモリ上のデータを取得できるようにした。このリモートメモリ監視機構をVM監視基盤であるVM Shadowに組み込み、既存の監視ソフトウェアを動作させられるようにした。監視性能を測定した結果、ナイーブな実装では監視に従来の15倍の時間を要することが分かった。その内訳を調査したところ、通信に64%の時間が費やされていることがわかった。さらに、監視対象VMとセキュリティVMが同一ハイパーバイザ上で動作している場合に、監視を継続したまま一緒にマイグレーションする機構も開発した。 これらに加え、ネステッドVMを用いた時にゲストVMがどの物理サーバ上で動作しているかを検出する機構を開発した。実装にはEucalyptusを用い、ゲストVMを管理するEucalyptusのフロントエンドとホストVMを管理するEucalyptusのフロントエンドの情報を突き合わせて物理サーバを特定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度、27年度の研究実施計画を一部先取りして、ネステッドVMを用いた際にゲストVMが動作している物理サーバの特定まで行うことができた。この機構はゲストVMがマイグレーションにより移動する環境において最適化を行うために必要となる。また、セキュリティVMが監視対象VMを監視している際に、それらを同時にマイグレーションする機構の開発を行うこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ホストVM間の瞬間マイグレーション(課題(1))とセキュリティVMの柔軟なマイグレーション(課題(2))の発展させていく。 課題(1)については、マイグレーションの高速化およびダウンタイムの削減を行う。現状では、768MBのメモリをもつゲストVMのマイグレーションに13秒かかり、ダウンタイムが9秒発生している。この原因として、ゲストVMのメモリ情報等を仮想ネットワークで送信していることが挙げられる。Xen 4.2のネステッドVMでは仮想ネットワークの性能が低いため、この処理がボトルネックになっていると考えられる。そこで、仮想ネットワークを経由せず、ホスト・ハイパーバイザ経由でメモリ情報等を受け渡すことにより高速化を図る。さらに、ホストVM間でメモリをスワップするのではなく、メモリを移動させることでメモリ使用量の削減も行う。一方で、ダウンタイムを一定以下に減らせないようであれば、ホストVM間でメモリをコピーすることでライブマイグレーションを行うことも検討する。その上で、提案するマイグレーション機構をソフトウェア若化に応用し、多数のゲストVMを一括して高速にマイグレーションできるようにする。 課題(2)については、リモートメモリ監視機構の高速化を行う。平成25年度に一部の最適化を行うことはできたが、ハイパーバイザに監視処理の一部を行わせることでさらなる高速化を目指す。また、監視対象VMのメモリのリモート監視だけではなく、ディスクやネットワークのリモート監視にも取り組む。さらに、同一物理サーバの異なるハイパーバイザ上でセキュリティVMと監視VMが動作している際に、仮想ネットワーク経由で監視を行うのではなく、ホスト・ハイパーバイザ経由で直接監視を行えるようにする。そのために、リモートからゲストVMのメモリに直接アクセスできるようにし、従来の監視性能と同等の性能を目指す。
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