今年度は、ホストVM間の瞬間マイグレーション(課題(1))とセキュリティVMの柔軟なマイグレーション(課題(2))に加え、VMの物理配置に応じた最適化(課題(3))にも取り組んだ。 課題(1)については、ホストVM間の瞬間マイグレーションの評価を行った。本評価においては、仮想IaaSクラウドと既存のIaaSクラウドでの従来のマイグレーションおよび先行研究との比較を行った。その結果、マイグレーション時間は6~22倍高速になった。また、マイグレーション時にはネットワーク負荷とメモリ負荷はほぼゼロとなり、CPU負荷も従来の30%以下となることが分かった。加えて、瞬間マイグレーションを活用して仮想IaaSクラウドのインスタンス配置を動的に最適化できるシステムの開発も行った。 課題(2)については、VMのリモート監視の評価を行った。メモリ監視については性能が従来の8%程度にまで低下したが、ディスク監視については3%程度の性能低下で済むことが分かった。一方、VM監視基盤を用いて既存の監視ソフトウェアを動作させたところ、ディスクの整合性検査では性能が8%低下したが、マルウェア検査では13%向上した。パケット検査では攻撃の検出時間の増加は2%程度であった。また、AMTと呼ばれる監視用ハードウェアを仮想化した仮想AMTの開発も行った。加えて、仮想IaaSクラウドに依存しない監視手法の検討も行った。 課題(3)については、IaaSクラウドを構築し、その上にEucalyptusを用いて仮想IaaSクラウドを構築した。そして、IaaSクラウドと仮想IaaSクラウドを連携させ、仮想IaaSクラウド上のインスタンスがどの物理ノード上で動作しているかという位置情報を管理できるようにした。これにより、物理ノードと仮想ノードの両方における負荷分散を考慮したインスタンス配置を行えるようになった。
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