研究実績の概要 |
シナリオはシステムや利用者のふるまいを明らかにするために有用であり,システム開発にシナリオを活用する手法が開発現場においても様々な場面で実践されている.しかしながらシナリオを用いたシステム開発では,高品質かつ多種のシナリオを用意する必要があるが,シナリオの再利用に関する研究は進んでいない.本研究では既存のシナリオ群から指定したシナリオと類似したシナリオ群を効率よく検索する手法の確立を目的としている.シナリオの類似性には,(A)システムの観点からの類似性(例えば新幹線予約シナリオと新幹線の予約キャンセルシナリオ)と(B)振舞いの観点からの類似性(例えば新幹線の予約シナリオと航空機の予約シナリオ)の2種類を想定し,これらの2種の観点からの、指定したシナリオと類似したシナリオを検索できるようにした. 平成25年度は, 2つのシナリオ間の差分情報を基にして,システムに関する類似度と振舞いに関する類似度を数量化する手法を確立し,指定したシナリオと類似するシナリオ群を検索する手法を確立した.また,平成26年度は, 平成25年度に確立した,2つのシナリオ間のシステムの観点からの類似性の数量化手法と振る舞いの観点からの類似性の数量化手法に基づいたプロトタイプシステムを実装した. 平成27年度は,過去2年間の研究成果を基にして,指定したシナリオに対して類似したシナリオを数量化結果を利用して検索するとともに,検索結果を視覚的に分かりやすく表示するプロトタイプシステムを実装した.数量化された類似度の一定値以上のシナリオを類似シナリオと判定し,抽出対象としている.またシステム類似性と振舞い類似性の2つの軸を用いて検索結果を分かりやすく表示する機能を実装した.さらに,具体的なシナリオ群を対象としてプロトタイプシステムの有用性の評価を行った.
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