工場内産業機器やロボットの遠隔制御等,制御システムを無線ネットワークで構成する通信システムは無線ネットワーク化制御システムやM2M (Machine-to-Machine)通信等と呼ばれる.このような通信環境では,システムを安定動作させるため高信頼な無線通信技術が必須である.あるいは,大規模な災害が発生した場合には,通信不能となっている設備を迅速に把握して復旧に努めることが重要である.このような環境では,いずれもネットワーク内の状態を計測することが重要な技術課題となる.本研究では,ネットワーク外部からパケットや信号を送出し,その応答を解析することによりネットワーク内部の状態を推定する通信トモグラフィ技術について検討することを目的としてきた. 本研究では,論理型ネットワークトモグラフィと無線トモグラフィの二つの手法について提案し,その性能評価を行ってきた.論理型ネットワークトモグラフィは,ネットワーク中に送出したパケットの応答からネットワーク内部の故障箇所を検出するための手法であり,エンドーエンド間のパケットの応答とネットワーク内部の状態が論理式で定式化される.パケットを送出するための観測経路を適応的に設定する適応的論理型ネットワークトモグラフィを提案し,その有効性をシミュレーション実験により明らかにした. また,無線トモグラフィは,人が立ち入ることのできない領域内部の通信状態を外部から送出された信号の応答より推定する手法である.行列再構成型の圧縮センシングを用いた無線トモグラフィ手法を提案し,その有効性をシミュレーション実験により明らかにした. 本研究で提案した手法は,いずれもネットワーク内部の通信状態を把握するのに有効であるが,伝搬路の時間空間性が強い場合にはその性能を最大限に生かし切れないという問題等があることも明らかとなった.これらの課題については今後検討していく.
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