研究課題/領域番号 |
25330108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
鶴 正人 九州工業大学, 情報工学研究院, 教授 (40231443)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多対多転送 / マルチパス転送 / マルチキャスト転送 / OpenFlow / ネットワーク計測 |
研究概要 |
本研究課題期間中に、広域多点間の大容量データ共有のために、最新の中継制御の枠組みであるSDN に基づく高機能形ネットワークを想定した以下の観点からの研究開発を行う:(i) 多点間データ共有向け中継制御(空間・時間・符号化制御の連携による)手法の開発。(ii) グループ内データ共有の目的・条件に応じた性能指標の定義、および複数グループがネットワーク資源を競合利用する場合のグループ間の公平性のモデル化・制御。(iii) OpenFlowに基づくネットワーク・Linuxシステム上の実装による手法の試作および実験ネットワークでの評価。 初年度として、(i)に関して、まず、昨年度から進めてきた1対多の大容量ファイル転送における帯域の有効利用による高速化において、集中制御型のマルチパス・マルチキャスト手法のアルゴリズムを開発し、OpenFlow上で試作し、有効性を評価した(査読付国際会議論文集掲載済)。さらに、複数の1対多マルチパス・マルチキャスト転送を最適にスケジュールして多対多の大容量ファイル転送を高速化する手法のアルゴリズムも開発し、OpenFlow上で試作・初期評価した。また、ファイル蓄積等の要素機能をDTNの枠組みの一般化として検討した。 (ii)に関して、OpenFlowネットワーク内部のフロー変動や性能劣化を効率よく迅速に検知するための効率的なアクティブおよびパッシブ計測手法を開発し、OpenFlow上で試作・評価した。これは今後背景トラヒックを考慮した制御を実現する上でも重要である。 一方、(iii)に関して、OpenFlowスイッチを用いたローカル環境における小規模実験環境の構築を行い、上記(i)や(ii)の実験等を実現した。さらに、JGN-X上のOpenFlowテストベッドRISEに接続し、広域実験の初期的準備が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i)「多点間データ共有向け中継制御(空間・時間・符号化制御の連携による)手法の開発」に関しては、9.の実績概要で述べたように、様々な要素技術のアルゴリズム開発やOpenFlow上での試作・実験を予定以上に進捗させ、特に1対多転送に関しては論文発表まで進んだ。一方、中継符号化の効果の分析や1対多転送におけるFECによるパケットロス対応などが積み残しになった。 (ii)「グループ内データ共有の目的・条件に応じた性能指標の定義、および複数グループがネットワーク資源を競合利用する場合のグループ間の公平性のモデル化・制御」に関しては、これも9.で述べたように状態監視(計測)の部分の手法の開発を進め、めどを立てたが、グループ競合時の公平性に関するモデル化等が積み残しになった。ただし、研究協力者との共同研究の中で様々な公平性の枠組みの一般化に関する検討を進めることができた。 (iii)「OpenFlowに基づくネットワーク・Linuxシステム上の実装による手法の試作および実験ネットワーク(ローカルおよびJGN-X)でのプロトタイプ評価」に関しては、予定通り最新のOpenFlow仕様V.1.3対応の商用レベルのスイッチを導入し、実験環境整備が過不足なく進んでいる。 以上より、でこぼこはあるものの平均的には想定内の進捗と言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、平成26年度は、ここまでに得られた結果を基に、上記の(i)に関しては、複数の手法を連携・統合する手法の全体アルゴリズム(フレームワーク)を設計し、特に、Multi-roundやパイプラインという時間的要素を統合する枠組みを検討する。中継符号化については離散最適化問題としての知見を深めるために、研究協力者との連携を強化する。さらに、様々なパターンに対応できるようなパラメタ化を行い、適切なパラメタを探索するアルゴリズムの検討を行い、計算機シミュレーション評価を行う。また、背景トラヒック等は存在しない専用ネットワークを仮定した上で、連携形手法の設計にデータ共有向け性能指標を反映する。 (ii)に関しては、複数グループ競合のモデル化、性能指標に基づく公平性の定義を行い、(i)の手法の公平性分析も実施する。この部分は、特に多次元公平性に関して、研究協力者との連携を強化し、それらを資源割り当て制御に適用するアルゴリズムも検討する。 (iii)に関しては、1年目の(i)の手法の試作を完成させ、その後、手法拡張に応じて試作も拡張する。また、追加購入するOpenFlowスイッチも用いてローカル環境を拡張し、その上である程度複雑なネットワークトポロジーの実験を行う。さらに、広域テストベッドJGN-X/RISE上での実験を進める。
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