無線マルチホップネットワークにおける通信容量予約手法について、昨年度までに考案、設計したプロトコルの性能評価をシミュレーション実験によって行なうとともに、開発済みである球形移動無線ノードに実装した。提案手法の適用により、単一経路による通信容量予約、合流/分流のない複数経路による通信容量予約と比較して、提案手法による通信容量予約では複数経路の合流/分流を可能としていることから、予約成功率を大幅に改善することができることが確認された。特に、中継移動無線ノードが比較的高密度に分布する領域において、中継無線ノードを接続する無線リンクに対して既に予約した通信容量を削減することによって、中継無線ノードに残される未予約の通信容量を減少させることなくエンドエンドの予約通信容量を増加させるケースが多数発生することが明らかとなった。実機への実装では、適用するマイコンを Raspberry Pi 2 とした実験環境を構築し、提案手法を実装した。 また、追加予約容量を得ることができる無線マルチホップ配送経路の探索に要するコストを削減するために、探索範囲を縮小する手法を考案した。ここでは、エンドエンドの通信容量を増加させない無線マルチホップ経路の探索を途中で打ち切る枝刈りのための規則を検討し、通信容量予約プロトコルを改良した。この改良は、移動無線ノードが高密度に分布する領域で特に有効に機能し、探索時間の短縮を実現した。 また、これまでは個々の移動無線ノードがそれぞれ独立で単一の管理者のもとにはないことを前提としてきたが、逆に単一の管理者のもとにあることを前提とする手法も考案した。ここでは、各移動無線ノードの隣接関係と各移動無線ノードに接続する無線リンクにおける通信容量予約状況を資源管理サーバが把握し、要求する通信容量を予約するための計算を資源管理サーバで行ない、各移動無線ノードに計算結果を通知する。
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