研究実績の概要 |
EPUB3.0に基づく,知識集積型ソーシャルリーディング基盤の構築を目的として,前年度に引き続き研究を行った. 知識集積型ソーシャルリーディング基盤の開発では,前年度に実装したプロトタイプシステムの開発を継続し完成度を高める実装を行った.一方クライアントについては,EPUBCFIを使ったブックマークや注釈に関する処理の高速化を目的として,新たな索引手法の開発を行った.EPUBCFIは,EPUB書籍内の任意の一点を唯一に識別することができるが,コンテンツの文字数を考慮した位置を直接導出するには,追加の処理が必要である.このため,全てのテキストノードについて,そのEPUBCFIと先頭の位置を列挙し,それをトライ木に格納する.多くのEPUBCFIがプレフィックスを共有することから,効率的な索引を実現することができることを示した. 構築したシステムにおいて,被験者6名による実験を行い,実際にデータを取得した.具体的には,EPUB版が公開されている技術書 "Big Data Now" を対象とした輪講形式のセミナーを実施し,利用者により作成されたブックマーク73件,アノテーション472件,操作ログ10,152件を取得した.取得したデータを分析することにより,1)ブックマークやアノテーションが集中するコンテンツ,2)各ユーザ毎のブックマーク/アノテーション作成の傾向,3)読書の進捗,4)使用時間の傾向など,利用者の読書行動に関するデータが取得可能であることを検証した.この成果をとりまとめた論文 "A Social Reading System for EPUB Publications" は国際会議 The 17th International Conference on Information Integration and Web-based Applications & Services (iiWAS 2015) においてフルペーパとして採択された. その他,文献データからの知識発見の取り組みとして,文献データベースからのトピック変遷の抽出手法やXMLデータにおいて類似した部分木を高速に探索する手法を開発した.
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