研究課題/領域番号 |
25330136
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
亀山 渉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90318858)
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研究分担者 |
スィープラサスック パオ 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (40571899) [辞退]
菅沼 睦 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50399507)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アトモスフェア・メタデータ / メタデータ / 瞳孔径情報 / 視線情報 / 基礎律動 |
研究実績の概要 |
2014年度は、以下の3課題について研究成果を得た。 (1)瞳孔径情報及び基礎律動情報による視聴者の情動反応解析手法の検討: 瞳孔径情報と基礎律動情報をクラスタリングによって関係解析する手法を主として検討した。実験結果によれば、瞳孔径情報のみ、あるいは、基礎律動情報のみによるクラスタリングでは映像と対応した情動を分類することはできず、両者を合わせたクラスタリングにより、映像と対応した意味のある情動分類が行えることが分かった。これを裏付ける別の実験結果として、音楽による情動反応を基礎律動のみによって分類することは難しいことも判明した。また、視聴者の集中度(あるいは飽き)を瞳孔径変動の分散を使って検出できることも明かとなった。一方で、瞳孔径の対光反射補正に関しては、様々な輝度パターンを被験者に見せ、その結果を加算平均することで、非常に良い補正値が得られる ことが分かった。以上の検討に関して、7件の学会発表を行った。 (2)視聴者情動反応による視聴者グループ分類手法の検討: 視線の停留時間及び瞳孔径を主として利用する手法を提案し、視聴者の主観に基づいた画像分類とその可視化の検討を行った。実験結果によれば、視聴者の主観に基づく画像分類がある程度可能なこと、並びに、それに対する画像類似度の可視化が行えることが明かとなった。これは従来の画像特徴量に基づく画像分類手法とは根本的に異なり、視聴者が画像を理解した内容に基づく画像分類であり、提案手法によって、いわゆる画像検索等におけるセマンティックギャップを克服できる可能性が示唆された。加えて、この手法を利用して、同じような画像理解をしている視聴者をグルーピングできる可能性も示唆された。以上の検討に関して、3件の学会発表と、1件の国際会議発表を行った。 (3)アトモスフェア・メタデータの記述方式の検討: 以上の検討結果を元に、基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
瞳孔径情報及び基礎律動情報による視聴者の情動反応解析手法の検討では、2013年度の研究における最大の課題であった瞳孔径の対光反射反応補正に関して、加算平均と様々な輝度パターンを被験者に見せることで、観測される瞳孔径から可能な限りノイズとなる情動反応を取り除き、かつ、異なった周期を持つ輝度パターンに対するより正確な補正値を得ることができた。また、瞳孔径情報と基礎律動情報を合わせてクラスタリングすることにより、意味のある情動分類を行えることが分かった。よって、当初の目標を達成したと言える。 視聴者情動反応による視聴者グループ分類手法の検討においては、視聴者の主観に基づいた画像分類とその可視化が可能であることが分かり、この手法を利用して同じような画像理解をしている視聴者をグルーピングできる可能性が示唆された。2013年度に検討したフレッチェット距離による視聴者グルーピング手法は、視線の類似度によってグルーピングを行うものであった。しかしながら、この方法では、いわゆる制作者の視線誘導による影響と視聴者の意志による視線変動が合成されて観測されるため、その切り分けが難しかった。これに対して、2014年度で検討した手法では、画像の理解を元に類似度を判定できることから、より有効なグルーピングにつながる可能性があると考えられる。以上のことから、当初の目標を概ね達成したと言える。 また、アトモスフェア・メタデータの記述方式の検討では、目標であった基礎的な検討を開始し、2015年度の検討につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
瞳孔径情報及び基礎律動情報による視聴者の情動反応解析手法の検討では、クラスタリングによる手法を更に検討する。併せて、スパースコーディングを利用した解析手法も検討することとする。スパースコーディングを利用することにより、元データの特徴をより正確に抽出できることが期待でき、その結果、より良い解析結果が得られるものと期待される。また、このようなマルチモーダル的な考え方を更に進め、瞳孔径情報及び基礎律動情報だけでなく、心拍情報、顔面皮膚温度情報の利用可能性も検討し、より良い情動反応解析ができる手法を検討するものとする。 視聴者情動反応による視聴者グループ分類手法の検討では、視聴者の主観に基づいた画像分類とその可視化を利用して、同じような画像理解をしている視聴者をグルーピングできる可能性が明かとなった。しかしながら、得られた可視化図の距離が必ずしも主観類似度の距離と比例していることは保証されていないという問題がある。また、時間の制約から、極限られた画像に対する可視化図しか得られていない状況にある。よって、2015年度では、より多くの画像に対する可視化図を作成し、主観に基づいた画像類似度をより定量的に表せる手法の検討を進めることとする。併せて、それを利用した視聴者グループ分類手法に関するより詳細な検討を行うこととする。 アトモスフェア・メタデータの記述方式の検討では、2014年度の基礎的な検討を踏まえ、具体的な記述方法とその利用について検討を行うこととする。 以上の検討の結果によって得られた成果は、適時、学会等で発表を行うものとする。
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