研究課題/領域番号 |
25330141
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 秀彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (20164824)
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研究分担者 |
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部, 教授 (30287958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高精度演算 / 混合精度演算 / クリロフ部分空間法 / 3重対角化 / 倍々精度演算 / 疎行列 |
研究実績の概要 |
数値シミュレーションの核として使われているクリロフ部分空間法は丸め誤差の影響をうけやすい。丸め誤差の影響を軽減できれば、理論的な収束に近づき、その長所がよりいっそう発揮できるようになるはずである。本研究では、丸め誤差の影響をうけにくい計算環境を用意して、クリロフ部分空間法の収束を向上させる。利便性と性能を考え、一般的なコンピュータで提供されている倍精度浮動小数演算のみを用いて4倍精度演算を実現する「倍々精度」を実装方法として採用し、倍々精度演算の利用できる計算環境を構築する。 利用の観点からは、すでにある汎用的な数値計算環境で既存の倍精度演算と混在できる形での倍々精度演算の導入が望ましい。以前に作成した Scilab での実装を参考に、 MATLAB 上で実現するため、MATLAB の言語仕様の調査、MATLABの実行条件の調査などを行った。また、GPU による高速化を視野に入れ、どのようなソフトウェアと実行環境が必要かを調査し、ハードウェアとソフトウェアの検討を行い、平成27年度末に GPU サーバを発注した。 本来の計画では、クリロフ部分空間法を用いた連立一次方程式の解法を重点的に検討するはずであったが、固有値問題における3重対角化部分にも同様な精度依存性の問題が存在することがわかり、歴史的にも問題となっていることから、急遽、これまでに作成したソフトウェアを使って3重対角化部分の高精度化の影響を評価し、途中経過を EPASA 2015 でポスター発表した。その後、会議論文として投稿した。 EPASA 2015 の会議論文として、もう一本、固有値解析に関する論文を投稿し、両方とも現在、査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画では、平成25年度が「環境構築」、平成26年度が「予備実験」となっていた。本来終了しているはずの環境構築、予備実験とも中途半端な状況でありながら、新たな適用分野としてのクリロフ部分空間法を用いた疎行列の3重対角化に対する高精度演算の有効性の評価を行い、ポスター発表を行った。 また、計画での順序とは異なるが、完成した場合のシステムの要求仕様などをチェックし、高速化に必要な GPUサーバの機種選定を行った。おそらく計画の完成度としてはかなり低くなりそうではあるが、高精度演算が有用な適用例など、より実用的に意味のある別の成果が得られると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、新たな適用分野として、対称疎行列の固有値計算における3重対角化に対する高精度演算の効果がどれくらいであるかを評価している。時間は有限なので、プロジェクト期間中の実装は(最低限の)基本部分にとどめ、高精度演算の有効な適用例を増やす方向に向かいつつある。 計画には「高精度演算が有用な適用例を探す」と書かなかったが、こちらでより実用的に意味のある成果が得られそうである。システムの完成度をあげるよりも、新たに明らかになった有用性を発表することに注力するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度末に GPU サーバを発注し、年度内に納入されなかったため、GPUサーバの代金約95万円は支出済みと考えられる。サーバ上のソフトウェアにもついても、サーバの納入を待っていたため、購入の処理が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
年度末をまたがったことによる一時的なみかけの問題であり、実際の問題はないと考えている。
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