リバースエンジニアリングの技術の進歩に伴い,ハードウェアトロイの脅威が顕在化してきている。一方,機密情報は,理論的に安全性が保障されているアルゴリズムを用いて,データを暗号化することで安全性を確保している。しかし,暗号化は回路で行われるため,その回路動作時の消費電力等を測定することで,不正に内部の秘密情報を解析する攻撃が研究されている。そのため,最近では暗号回路を対象に,いくつかの不正防止回路が開発され,実用化されている。そこで申請研究では不正防止回路も含めた暗号回路に対するハードウェアトロイの対策手法と検出手法を確立する。平成25年度から平成28年度において実施した研究において,各サブテーマに関するいくつかの要素技術を開発するだけでなく,要素技術を用いた新しい技術の開発も行った。まず,対象とする暗号回路について,標準暗号AESだけでなく,IoTで使用されることが有望な軽量暗号などを対象に,不正防止回路の構造も含めていくつかの要素技術を開発した。さらに,認証暗号や改ざん検知暗号についても,いくつかの要素技術を開発した。また,トロイの検出技術に関しては,SVMや深層学習などの機械学習をベースとした手法を提案し,FPGAに実装したトロイに対して適用することで,その有効性を検証した。提案手法では,トロイのFPGAへの実装方法による違いについても,面積や消費電力について,分析・考察を行った。一方,対策手法に関しては,実用的なアプリケーションとしての車載ECUを対象としたトロイの対策技術を開発した。また,処理時間が問題になる車載システムについて,CANを実装したモックアップを用いた評価実験により,その有効性を検討した。これらの成果については,国内研究会や国際会議で発表するだけでなく,学術論文誌でも発表した。
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