研究課題/領域番号 |
25330165
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嶋 啓節 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60124583)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 社会性 / サル / 相互関係 / 社会行動 |
研究概要 |
ヒトが持っている感情とのアナロジーで、対象が同じ霊長類であるサルであっても、(1)競争対象(ライバル)となるサルが、自分が羨むような物質(主に食物)を所有する時、当該サルは不快・妬み(Envy)を感じ、逆に、(2)羨みの対象となっているライバルのサルが不興をこうむる時、当該サルは、ある種の快感・幸福(Schadenfreude)を、ヒト以上に敏感に感じていと考えられる。特に(1)ついては、サルの日常の行動観察から、十分想定し得る。 この(1):Envy‐他者の幸福に嫉妬すること、(2):Schadenfreude‐他者の災難・不幸を喜ぶこと、の感情の神経機構を解明するために、申請者は、この2つの状態にあるサルの神経基盤を解明するための研究を行っている。すなわち、この研究では動物実験では取り扱うことが不可能と考えられていた動物の感情、“他者の幸福を妬む気持ち:Envy”、あるいは“他者の不幸を喜ぶ気持ち:Schadenfreude” が生ずる際の脳の特定領域の関与を個々の細胞の活動変化で捉えることを最終的な目標として、研究をすすめている。この研究では二頭のサルの相互関係(例えば、一方が幸福な状態にある時、他方は不快・不幸な状況に陥る)を利用した実験モデルを提案しており、2頭のサルを向かい合わせて訓練するためのシステムを完成させた。すなわち、主たるサル(課題を遂行しているサル-1を観察しているサル-2を主たるサルとする)は自分の課題遂行により1つは正の報酬(バナナ・チップなど)、もう1つは負の報酬(昆虫のオモチャなど)を得ることになっている。現在は サル-1の訓練を進行させており、サルの前のパネルの中の信号によって複数の選択の中から適切なものを選ぶ訓練をしている。なお、サル-1が訓練をしている際にはサル-2をその様子の観察者として置いており、二頭のサルの相互関係をお互いに認識しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2頭のサルが対峙できる訓練室を完成させ、実際に訓練を開始している。正の報酬(バナナ・チップなど)と負の報酬(昆虫のオモチャなど)に対する反応は当初の想定に近いものが得られつつある。同時に、サル-1が訓練をしている際にはサル-2をその様子を観察できる状況を形成できており、研究全体は順調な進捗状況と言える。サル-1が訓練している際にサル-2が影響をあたえる訓練の初期段階を形成しているが、その際にはサル-1は、サル-2による阻止の認識をしているかについては正確な判定はできないが、自分の仕事が他の何かに影響されている点については認識している様子が認められる。
|
今後の研究の推進方策 |
サル-1の訓練を進め、適格なパフォーマンスができるようにする。サル-2についてもサル-1の遂行を阻止する状況をつくるための訓練をおこない2匹のサルの相互関係がより密接になるような状況を形成する。それらが達成された後、目標としている、帯状皮質、線状体、眼窩皮質からの細胞活動を記録する。目指すところは、サル-1が成功して正の報酬を得たとき、逆に負の報酬(罰)を受ける際のサル-1とサル-2の細胞活動の違いを脳部位間で比較することである。言うまでもないことであるが、帯状皮質は前・後の2つに分類されるのであるがそれぞれがどのような振る舞いをするかは興味の焦点の1つである。また、行動学的解析により、ヒトへも適用可能な社会性の数理モデルを提示する予定である。
|