研究課題/領域番号 |
25330166
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 ひろみ 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (00359580)
|
研究分担者 |
綾部 早穂 筑波大学, 人間系, 教授 (40323232)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 人間情報学 / 認知科学 / 実験心理学 / スクロール表示 |
研究実績の概要 |
表示領域が限られた携帯型端末を利用する際に,文章や画像をスクロールして表示する方法が日常的に用いられるが,読みにくさや画面の狭さから不快に感じることが多い.本研究の目的は,文章や画像のスクロール表示の利用について認知心理学的観点から調べることにより,このような読みにくさ・不快さを低減する可能性を探ることにある.前年度は,1. 横書き文章の縦スクロール表示の読み特性に関する成果を論文発表し,2. スクロール表示によるマンガの読み特性について実験的に調べた.本年度は,1. この実験で得られた成果をまとめて学会発表し,2. マンガを読む際のスクロールパターンの分析方法を考案,これを用いて分析を行った.その結果,小さな画面を通して,それより大きなマンガのページ画像をスクロールしながら読む場合,(1)マンガの一般的なコマ読み順序(右上のコマから左へ進み,一段下がって再び右から左へ進み,最終的に左下のコマで終わる)に従った読み方が多く見られること.(2)その他に,縦長のコマがある場合にはそのコマを上から下へスクロールするというように,一般的なコマ読み順序からはずれたページも,適切な順序で読むことができていることが示唆された.3. これらの結果を論文投稿に向けて準備中である.4. 以上の成果を基に,より読みやすい表示方法の提案へ向け,いくつかのスクロール方法によりマンガの読み特性を比較する実験の準備を行った.次年度は,これらのスクロール方法によりマンガの読みやすさを比較する実験を行い,より読みやすいスクロール表示方法を探る.さらに,マンガのように読み方に制約のある画像から,制約の無い,多様な走査順序で観察可能な画像を用いてスクロールパターンを解析する.その際,これまでに得られたマンガページ画像のスクロールパターン分析手法が利用できると期待される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに十分な実験結果が得られ,その分析も進んでおり,成果が得られつつあるため.本年度予定していた実験が1個だけ次年度に回ってしまったが,それも実験プログラム作成等の準備は終了しており,すぐに実行できる状況にある.
|
今後の研究の推進方策 |
1. 2要因からなる4通りのスクロール方法によりマンガの読み特性を比較する実験を行う.その結果から,スクロール方法,拡大縮小のコントロールについて,どのような組み合わせがマンガのスクロール表示に適当であるかについての手がかりを得る. 2. これまでにマンガの読みに関する実験で得られた結果を多様なマンガ素材を用いて検証する. 3. これまで,マンガ画像を対象として行ってきた実験の方法を,マンガのように画像の見方に制約の無い,多様な走査順序で観察されることが予想される画像を実験材料として実行する. 4. 以上の実験を行い,限られた画面を用いた文章やマンガの読み,画像の観察の認知的特性をまとめ,それぞれに適した表示方法を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
1. 本年度予定していた実験のうち1個が,実験準備が整ったところで年度末となり,次年度すぐに開始するところであるが,その人件費・謝金が未使用となった. 2. 初年度より,高価な眼球運動測定装置の購入を計画していたが,研究開始当初新たな共同研究者を迎えたことで,その研究室が所持する高精度眼球運動測定装置を利用できることになり,本研究室では,安価で機動性のある装置を購入した.
|
次年度使用額の使用計画 |
1. 次年度に行う実験に関する人件費・謝金として使用する. 2. 複数の研究室で同等の実験を行うことができるように,高性能のPC,タッチパネル液晶ディスプレイ,実験プログラム開発用プラットフォーム等の購入に当てる.
|