研究課題/領域番号 |
25330167
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松香 敏彦 千葉大学, 文学部, 教授 (30466693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知モデル / 概念学習 / 基本カテゴリー |
研究実績の概要 |
馬名の文字数と競馬の馬券購入行動に関する意思決定について実データを用いて分析した。その結果、熟達者の割合の多いレースにおける馬券購入に関する意思決定は「馬の能力」によって説明できるのに対し、非熟達者の割合の多いレースにおける購入行動は名前の長さの情報量に強く影響されることが示唆された。レースの勝敗を予測するのに有効な情報(馬の能力など)を保持していない非熟達者は無作為に馬券を購入しているのではなく、レースの勝敗を予測するのに有効ではないが何かしらの情報が最大とするようなヒューリスティックが働いていることが示された。基本カテゴリーの背景には情報の最大化があると示されていることから、本研究で得られた「情報の最大化」は人間の認知の潜在的で普遍的なメカニズムであることが示唆された。
日々の生活で学習や知識形成の対象となるものに関する全ての情報を得ることは難しい。むしろ、不完全な情報をもちいて我々は学習したり知識を形成したりしている。そこで、人間のカテゴリー学習モデルをもちいて、情報の不完全性が学習にどのように影響するか計算機シミュレーションで検証した。その結果、不完全な情報は過学習や過剰一般化を防ぐ効果があることが示され、獲得された知識は、基本カテゴリーと同様に説明力と弁別能力が均衡したものであった。情報の不完全性が基本カテゴリーを生成するメカニズムの1つである可能性が示唆された。
問題解決における外的資源の利用効果を、行動実験を用いて検証した。実験の結果、外的資源の有無による問題解決の正答率への影響はみられなかったが、課題遂行に質的な違いが見られた。また、外的資源の有無は収束的な思考を必要とする課題より発散的な思考を必要とする課題においてより顕著に現れることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算モデルや計算機シミュレーションでは当初の予定にそって進んでいる。当初の想定していなかった意思決定に関するモデルへの展開も着手し、より総合的な観点からの研究を行えた。 しかし、行動実験においては当初の予定より遅れている点においては改善が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
計算機シミュレーションで示された「不完全性が過学習を防ぐ効果がある」を、行動実験をもちいて検証するよていである。また、不完全性と獲得される概念の階層に関して計算機シミュレーションをもちいて検証する。
行動実験から文脈によってカテゴリーが流動的になりうることが示されたことを踏まえ、流動的なカテゴリー認識に対する理論と計算モデルを構築する
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じてはいるものの少額であり、おおよそ予定どおりの使用であった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は当初の予定どおりに使用する。
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