本研究の研究課題は以下の6つである。 第一に、内省分析法の長所と短所は何か、第二に、内省分析法に限界があるとすれば、それを補完する方法はどのようなものか、第三に、動詞「切る」で明らかになった分析法・意味記述法は、他のすべての動詞にも有効か、第四に、上で明らかになった動詞の分析法・意味記述法は、他の品詞の意味構造分析にも有効か、第五に、これらにより明らかになった意味構造は第二言語習得にどのような影響を及ぼすか。また母語の対応語は習得にどのような影響を及ぼすか、第六に、以上のような観点を踏まえ、2012年に出版された『日本語多義語学習辞典』の意義と問題点は何か。 最終年度は内省分析法の短所を補うための方法として「切る」「下がる」などを用い、大規模コーパスを用いた研究を実施し、その有効性を確認した。また、3年間の成果を元に、求められる多義動詞の内省分析法について学会で発表を行った。また「上がる」「下がる」については学習者の母語(韓国語)の対応語との対照研究を実施し、第二言語としての日本語、または韓国語習得に及ぼす影響を考察した。さらに認知言語学的観点から作成した学習辞典『日本語多義語学習辞典:動詞編』を英韓中を母語とする日本語学習者、及び教師に使用してもらい、その効果や残された課題について分析した。 研究期間の成果は、研究代表者のウェブサイト(http://www.li.ocha.ac.jp/ug/global/mrs/1kaken.html)に掲載し公開するとともに、中国の大連理工大など2つの大学、ドイツで2017年3月に実施された市民大学日本語教師会のワークショップなどで公開した。
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