研究課題/領域番号 |
25330171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
柏原 考爾 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (40463202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知科学 / 脳神経活動 / 安全 / ヒューマンファクターズ |
研究概要 |
自動車の運転中に生じる錯視は、重大な交通事故を引き起こす危険性がある。例えば、夜間運転中の車の遠近感や坂道の上下関係の見誤りによる衝突事故が報告されている。この様な錯視は、単なる網膜上の誤検知だけでなく、我々の経験・知識・注意とも大きく関連している。しかし、錯視が生じるメカニズムは未解明な点が多い。従って、重大な交通事故に繋がる錯視と脳活動の関連性を検討することを研究目的とした。 平成25年度は、知覚レベルの錯視における運転者の脳神経活動を検討した。錯視による事故を防止するには、運転者の脳活動の検討から事故原因を追究することが重要となる。例えば、香川県高松市にある屋島ドライブウェイでは、傾斜5°の下り坂(約200メートル)と傾斜1°の下り坂(160メートル)が連続している場所がある。この様な場所では、運転者から見ると後方の下り坂が上り坂に見え(縦断勾配錯視)、誤ってアクセルを踏んでしまう危険性がある。そこで、運転中に生じる縦断勾配錯視に関連する脳活動を調べた。 最初に、行動実験(20代男性5名)として、種々の坂道勾配の呈示画像を用いながら、縦断勾配錯視が起こり易い条件を検討した。次に、特定された錯視条件の画像を用いて、坂道が上りか下りかを頭の中で判断している際の脳波を測定した。脳波解析では、各脳部位(正中前頭部・正中中心部・正中頭頂部)におけるパワースペクトルを算出した。画像呈示中は、全体的にθ波よりβ波が大きくなる傾向が見られたが、錯視を引き起こす坂道勾配に特化した脳活動については、さらなる検討が必要である。また、夜間運転中のテールランプの見誤りによる錯視の防止を目的とした運転支援システムの研究開発も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画に従い、認知心理実験や脳波解析を実施してきた。現在までに、錯視が生じる際の脳活動に関して、重要な知見が得られている。また、得られた研究成果は、適宜、国内学会や国際会議等を通じて公表している。さらに、錯視を対象とした新たな運転者支援システムの研究開発へも応用できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は、認知レベルの錯視による交通事故を対象に、脳神経活動・相互作用等を検討していく予定である。十分な予備実験により実験プロトコルを確立し、大脳皮質レベルの脳神経活動が検討できる解析法を確立する。その際、前年度までに構築した錯視課題に関する実験計画や周波数解析法を応用する。研究成果に関する学会発表等で、新たな視点や問題点が得られた場合、迅速に補足実験や再解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度末(平成26年3月)の出張費用が、次年度の精算となったために差額が生じた。また、生体計測用測定器(物品費)について、初年度はセットアップ期間も含むため、必要最小限の計測機器(アンプ類等)のみを購入したことも要因となる。謝金については、ボランティアによる実験被験者の参加が可能であったため必用としなかった。 平成26年3月の出張費用は、次年度4月の段階で既に精算されている。また、必用な生体計測用のアンプ類や消耗品(電極朔・センサー等)の追加購入に利用する予定である。
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