研究課題
本研究はコモンマーモセットを用い、物理的特徴に基づいて対象を区別するという比較的単純な弁別行動から、複数の刺激の特徴間の関係を抽出し様々な場面に応用させるという関係概念が成立するか、そして成立するならばどのような視覚的処理を行うことにより達成されるのか、について検討することを目的としている。昨年度、本実験系の遂行に必要な装置とタスクコントロールプログラムの開発を行い、効率良く一対の刺激間の弁別を形成できる環境を整えることができた。本年度は、弁別行動の随伴性を逆転させことによる、カテゴリー学習を訓練することを目指した。すなわち、個々の刺激の大きさのような絶対的特徴ではなく、「より大きい」「より小さい」のような相対的特徴を共有する刺激に随伴性(強化か非強化か)を共有させ、カテゴリー形成を訓練した。画面上に大きさの異なる正方形を一対提示し、初めはより大きな方にタッチすると餌を得られ、この課題を正確に行えるようになったら、今度はより小さな方に反応すると餌が得られることを訓練した。ヒト被験者では、随伴性の逆転を行うと初めのうちは直前の随伴性に基づいて誤反応を繰り返すが、逆転を何度も繰り返されると、逆転後速やかに新しい随伴性に従った行動を示すようになる。本実験の被験体も、逆転を繰り返す内に90%を超えるほどの正答率への回復が急速になっていくことが確かめられた。先行研究では逆転学習後の回復が、他の霊長類に比べて遅く、正確さも劣ることが指摘されていたが、本実験ではほぼ同等な成績が認められた。これは、本実験が用いた手続きの特徴である、提示刺激の位置のランダム化により、被験体の課題従事へのモチベーションがより維持されたことによるものと考えられる。これにより、最終的な目的であるところの相対的概念の転移(移調)テストに向け、ベースライン行動を標準的に訓練する方法が確立されたと言える。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、弁別行動の訓練から、逆転学習訓練方法の確立まで到達したため。
これまで通り、被験体の体調管理に留意し、実験を毎日同じ時間に規則的にできるようにしていく。
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Journal of Experimental Psychology: Animal Learning and Cognition
巻: 40 ページ: 317-326
10.1037/xan0000027