研究課題
本研究はコモンマーモセットを用い、物理的特徴に基づいて対象を区別する弁別行動から、複数の刺激の特徴間の関係を抽出し、様々な場面に応用させるという関係概念が成立するか、そして成立するならばどのような視覚的処理を行うことにより達成されるのか、について検討することを目的とした。昨年度までに訓練プログラムを開発し、タッチパネル反応形成、大きさの異なる二つの刺激に対する弁別行動の訓練を行ってきた。今年度は大きさの異なる刺激対に対する反応が、刺激の絶対的あるいは相対的特徴のいずれに基づいているかテストを行った。例えば、大・中・小の3つの正方形を用意し、訓練として大と中を提示し、大を選べば正解とする弁別訓練を行うと、刺激の絶対的大きさ、あるいは二刺激の相対的な大きさのいずれかを手掛かりとして用いる可能性がある。そこで、テストにおいては、大・中の刺激を提示する訓練試行に、中・小の刺激を提示するテスト試行をランダムに混ぜ、それに対する反応を検討した。つまり、テスト試行で小を選べば、訓練で不正解刺激となった中を避ける反応と考えられ、中を選べば、2刺激の相対的大きさに基づきより大きな方を選んだと考えられる。テストの結果、コモンマーモセットは相対的な大きさに基づいた選択、「移調」を示した。さらに、この移調が様々な刺激に応用可能な関係概念であるかどうか、新奇な刺激対を提示してテストした。その結果、5種類の刺激対に対して、訓練刺激対と同じ相対的な大きさに基づく反応が示されたため、関係概念として利用されていると考えられた。5種類の刺激対に対する反応には違いがあり、訓練刺激と外周長が近い刺激に対して最も高い確率で相対的反応が示された。これにより、マーモセットが相対的大きさという抽象的関係概念を使いうること、刺激般化が使えない場合は、外周長の類似性を利用する傾向があることが、初めて示された。
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Behavioural Brain Research
巻: 297 ページ: 277-284
10.1016/j.bbr.2015.10.025