本研究では、ヒトに際立ってみられる利他行動の進化起源を知るために、メスが子育て協力者としてのオスの質を評価することで進化してきたという「利他性の性淘汰仮説」を立て、長期的一夫一妻であるカラスをモデルとして検討した。つがい形成前の若鳥の群れを飼育し、利他行動である他個体への羽づくろいについて調べた結果、2つの発見があった。1つは、若鳥の相互羽づくろいは、優位オスから劣位オスへと一方的に生じた。もう1つは、そのようなオス同士の羽づくろいは、メスが見ている状況で頻度上昇する場合があることである。これらの結果はオスの利他行動がメスへのアピールであることを示唆しており、同仮説を支持する成果が得られた。
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