研究課題/領域番号 |
25330181
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
高氏 秀則 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90431329)
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研究分担者 |
金子 俊一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (50134789)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 画像情報処理 / 視覚情報提示 / 3次元形状認識 / 点群照合 / Time-of-Flight カメラ / 知能ロボティクス |
研究概要 |
プロジェクタの投影対象を2次元平面から3次元物体へ拡張した「2D」プロジェクタを実現するため、申請課題を独立した二つの課題「投影対象物の3次元形状認識手法の開発」と「ロバスト投影画像生成手法の開発」に切り分け、並行して研究を遂行した。 1.「ICPによる点群照合を用いた形状認識手法の開発」 投影対象の3次元形状の位置・姿勢の認識には、オフラインで詳細に計測した投影対象の密なモデル点群とTOF(Time-of-Flight)カメラで計測した疎なデータ点群を照合することで実現する。今年度は、点群照合手法としてICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを利用した。点群間で点群総数が異なる場合、ICPの評価値分布は極小値が多くなり照合の成功率が低下する。そこで、ICPにおける最近傍探索をK近傍探索に拡張し対応点ごとにK個の点間距離を求め、その総和を評価値とする改良を行った。これにより評価値分布が滑らかになり、結果として成功率の改善を実現した。 2.「平面形状を利用した投影画像の歪み補正手法の開発」 3次元物体を画像投影対象とした場合、投影画像をユーザに歪みなく見せるためには、投影対象の形状とユーザの観測位置に応じて投影画像を適切に補正する必要がある。本年度は、まず投影対象が単純な平面で構成される場合の投影画像補正手法について検討した。従来、平面の位置・姿勢の検出には平面に張り付けた既知のマーカ(ARToolKit)を用いていたが、これをTOFカメラから得られる計測データ(点群データ)により代替した。本研究では、点群データとして得られる3次元物体に対応した画像補正手法の開発が目的であり、TOFカメラの利用はその準備段階である。今年度の研究実績として、ピンホールカメラモデルと平面と直線の交点からなる投影画像補正手法を導出し、その有効性を実験的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.「投影対象物の3次元形状認識手法の開発」 今年度は、点群照合手法としてICPを利用した形状認識手法の開発を遂行する計画であったが、これに加えて局所領域の点群の密度を意味する局所一貫性(以下、LCPD:Local Consistency of Point Dispersion)を3次元点群照合に応用する研究を前倒しで開始した。LCPDに関しては、点群間の点群総数が異なる2次元点群照合において、LCPDの局所領域のサイズを照合段階に応じて随時更新していくことで大局的照合性能(初期位置ずれの許容範囲)と照合精度を両立させた手法を開発した。この拡張により、LCPDによる3次元不均衡点群照合の実現に向けた見通しを得ることができた。また、3次元物体を対象とした部分点群および不一致点群に対する照合実験を開始するなど、当初2年目以降に計画していた内容の一部に着手している。 2.「ロバスト投影画像生成手法の開発」 研究計画では2年目以降に予定していた曲面状の凹凸面に対する投影画像の歪み補正手法について、曲面を平面に近似することで平面形状に対する補正手法が適用可能か検討を開始した。また、曲面を平面で近似する際の分解能(平面領域の大きさ)が歪み補正に与える影響についての評価実験に着手した。曲面状の凹凸面では、投影対象に対して投影角度が異なることに起因して、ユーザが見る画像において明るさがバラつく現象を実験的に確認しており、今後、提案手法を投影対象の表面形状・表面特性を考慮した補正手法に発展させる足がかりを得ることができた。 本研究に関する研究成果として、既に2編の投稿論文を執筆し精密工学会誌に掲載された。したがって、現在までの達成度として、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.「投影対象物の3次元形状認識手法の開発」 点群照合では、2つの点群の初期位置の関係が照合の成否に影響を与えるため、大局的照合性能(初期位置ずれの許容範囲)が問題となる。今年度のICPアルゴリズムの改良では、初期位置のずれとして各軸周りの回転変化を扱ったが、今後はこれらに平行移動を加えた場合についても検証を進める。また、ICP以外の点群照合手法として、我々が独自に開発した局所領域の点群の密度を意味する局所一貫性(以下、LCPD:Local Consistency of Point Dispersion)の利用を検討する。この際、3次元計測器による単位面積あたりの計測点数は対象物までの距離に依存することから、LCPDは対象物までの距離に依存する。このため3次元計測器から得られる点群データをそのまま照合に利用することが出来ない。そこで、走査型レンジファインダやTOFカメラの測定原理を考慮することで、これらの影響を除去する前処理について考察する。LCPDはICPと比較して評価値を最適化する際に局所解に陥りづらい特性があり、大局的照合性能が高いことが実験的に確認されている。ここでは、その理論的な解明を進めることで大局的照合性能を更に高め、初期位置ずれにロバストな点群照合の実現を目指す。 2.「ロバスト投影画像生成手法の開発」 点群データとして得られる3次元物体に対応した画像補正手法を開発する。点群中から近傍3点を選択し平面を生成することで、投影対象を小領域からなる平面で近似し、これらの各平面に対して、今年度開発した投影画像補正手法を適用することで複雑な形状に対応可能か検討する。ユーザ視点から見た場合に、対象物を平面で近似する際の誤差や分解能(平面領域の大きさ)の影響について実験的に検証し、投影対象を平面近似する際の分解能を点群情報から自動的に決定可能か検討する。
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