研究課題/領域番号 |
25330185
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
眞鍋 佳嗣 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (50273610)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視覚メディア処理 / 表示装置 / 色域拡大 / 立体表示 / 分光画像 |
研究実績の概要 |
近年,教育分野における情報通信技術の利活用が推進され,様々な情報通信技術が教育現場で使われるようになってきている.特に映像提示装置は,計算機の操作画面としてだけではなく,映像コンテンツの表示にも不可欠である.しかしながら,一般の映像提示装置は基本的にRGBの三原色であり,我々が見ている色彩と必ずしも一致しない.また,立体提示によるリアルな情報提示も教育に重要な要素となると考えられる.そこで,本研究では,多原色表示により現実世界の色彩情報に近い映像を提示でき,かつ立体視が可能な教育現場において簡便に利用できる多元色立体提示システムを開発することを目的とする.そのために,(1)色再現域を広げるための多原色フィルタの設計,(2)2台のプロジェクタの同期提示による色再現,立体表示への影響の評価,(3)ステレオ分光画像および仮想物体の実時間表示のための処理方法の検討,の3点を重点に研究を進める.二年目である平成 26年度は,平成25年度に設計した帯域遮断フィルタを実際に試作し,システムを構築し性能評価を行った. ・前年度に設計した帯域遮断フィルタの波長特性をもとに光学フィルタを試作し,システムを構築した.構築したシステムにおいても実際に色域が広がることが確認された.ただし,本来の表示したい色とズレが生じていることが評価結果からわかった. ・ステレオ分光画像の入力を可能にするために,まず,分光画像からフィルタを取り付けた2台のプロジェクタへの入力データへの変換方法の検討を行い,実際に分光画像を入力とした多元色出力が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,多原色表示により現実世界の色彩情報に近い映像を提示でき,かつ立体視が可能な教育現場において簡便に利用できる多元色立体提示システムを開発することを目的とし,(1)色再現域を広げるための多原色フィルタの設計,(2)2台のプロジェクタの同期提示による色再現,立体表示への影響の評価,(3)ステレオ分光画像および仮想物体の実時間表示のための処理方法の検討,の3点についての研究を行っている. 二年目の平成 26年度は,研究の基盤となる没入型多原色立体映像提示システムの構築を行うため,平成25年度に設計した分光特性に合わせたフィルタを光学機器メーカに試作してもらい,フィルタを用いて実機での性能評価を行った.設計通りの特性を実現するのは難しいらしく,設計した分光特性と特に短波長側で特性が異なってしまったが,計測した結果を見ると色域が広がっていることが確認できた.ただし,入力と出力で色が少し異なるため,さらに色再現の精度を高める工夫が必要となっている.システムを構築して,色域の拡大はできたため概ね順調に進んで入るが,さらに改良が必要である. また,分光データの表示を実現したが,まだステレオ分光画像への適応ができておらず,計画よりやや遅れてしまっている.しかしながら,処理方法の基本技術は確立したと考えており,最終年度の平成27年度には計画通りの成果を出せるものと考えている.なお,今年度の研究成果は,平成27年5月に開催される国際会議で発表することが決まっている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,前年度の研究成果を受けてシステムの改良を行う.まず,試作したシステムの色再現について,入力と出力の色のズレが生じる原因を解明し,色再現性を高める手法を開発する.ただし,帯域遮断フィルタを設計し直して試作することは困難であるため,昨年度試作した光学フィルタを用い,データ処理による補正方法について検討を行う. また同時に,これまで我々が開発してきた分光動画像撮影システムを用いて得た分光画像やコンピュータグラフィックスなどの映像データを効率よく適切に表示するための処理方法についてさらに研究を進め,ステレオ分光動画像のリアルタイム表示の実現を試み,その実映像を用いて色再現,立体視,没入感などについて評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外発表のための旅費と光学フィルタの再試作が予算より多くかかり,謝金使用をやめたため.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度になるため,研究成果を論文にまとめるためその掲載費に充てる予定である.また,システムの評価において,被験者実験も行いたいので,そのための謝金としても使う予定である.
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