研究課題/領域番号 |
25330186
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川本 一彦 千葉大学, 統合情報センター, 准教授 (30345376)
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研究分担者 |
岡本 一志 千葉大学, アカデミック・リンク・センター, 特任助教 (10615032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人物検出 / 人物追跡 / 行動認識 |
研究実績の概要 |
本年度ではおもに次の3点について研究を進めた.まず,全方位カメラから人物位置を自動収集するために,Deep Convolutional Neural Networkに基づく人物検出器を開発した.画像の歪みや見えの変化を表現する画像特徴量を自動獲得でき,カメラ校正を必要としない利点がある.この検出器の学習では,大量の学習サンプルを準備する代わりに,少量の正サンプルに対する幾何変換および背景合成に基づくサンプル拡張法を提案している.実験屋内環境に天井設置されている全方位カメラ画像を用いて,HOG 画像特徴量とReal AdaBoostを組み合わせた既存手法よりも高い検出性能をもつことを示した.次に,フロアーフィールドモデルに基づく人物追跡手法を開発した.フロアーフィールドモデルは,人物間や人物環境間の相互作用を局所的な確率ルールとして簡潔に記述できる利点がある.この確率ルールを実際の人物移動データから推定する方法を提案している.インターネット上に公開されているベンチマークセットを用いて,ランダムウォークモデルをベースラインとして比較評価し,追跡成功確率の観点から提案手法の性能が高いことを示した.最後に,ウェアラブルデバイスを用いた個人行動認識のために,慣性センサを用いた行動認識について研究を進めた.ウェアラブル慣性センサ信号では,全身の移動に関する成分や手動作に関する成分など同時に発生する複数行動の信号成分が重畳されるため,観測信号を,傾向変動成分,循環変動成分,一動作をサイクルとする周期変動成分,および雑音成分等に分解する手法を提案している.このような信号分解により,歩行などの全身の移動行動や文字を書くなどの手動作に対して,それぞれの認識に適した信号成分のみを用いて特徴量を構成することができる.評価実験では,慣性センサ信号を分解しない従来手法と比較し,提案手法の識別率のほうが向上することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,前年度の研究実績をふまえ,おもに提案手法を実データに適用し,ベースラインとなる手法と比較評価することを進めた.人物移動モデルに関しては,確率的セルオートマトンを実データに適用するために,このモデルの確率を定めるフロアーフィールドモデルを実際の人物移動データから推定する方法を提案し評価している.さらに,我々が対象としている屋内環境下に設置された全方位カメラから人物位置を自動検出する手法も新たに実装し評価している.カメラだけでなく,慣性センサによる個人行動認識に関してもプロトタイプを実装し評価している.以上,実データへの適用および新たな手法の実装と評価については進んでおり,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに開発・実装した手法を拡張していくことを基本方策とするが,おもに次の2点に焦点を当てながら研究を推進していく予定である.まず,人物移動モデルにベイズ推定の枠組みを導入し,推定の精度向上および安定化をはかる.次に,人物位置間の関係のより自然なモデルとして,空間相関を組み込んだモデルの導入を計画している.空間相関を組み込むことにより,空間統計学の知見を活用することができ,今後の新たな研究展開も期待できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文誌への投稿が計画より少し遅れたため,採録されたときの掲載が次年度になり,掲載料として想定した使用額がおもに残ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
論文誌掲載料として使用する.
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