本年度では,前年度までに取り組んだ確率的セルオートマトンに基づく数値シミュレーションモデルによる人物移動に加えて,昨年度から着手した空間統計に基づく人物移動モデルの開発を進めた.この統計モデルの開発は,当初は,数値シミュレーションに基づくアプローチの有用性を示すために,いわばベースラインという位置づけで取り組んでいたが,同等あるいは上回る性能が得られる場合があるという予備実験の結果を受け,さらに研究展開するために統計モデルの拡張や実験検証に取り組んだ. 下記に本年度の成果をまとめる.
1.2次元人物移動の空間相関を自然に表現するために極座標を導入し,角度データに対するクリギングを用いた統計モデルを構築し,複数の実データを用いて予測精度の観点から評価した.その結果,60~100人のうち80%程度の人物の4秒後の位置の予測できることを示した. 2.1で構築した統計モデルをベースに,時空間相関をとらえるための統計モデルへと拡張した.実データによる検証では,空間相関だけを考慮するモデルに対して常に予測精度が向上するわけではなく,データに依存して決まることが分かった.この問題は,時空間相関をとらえる共分散モデルの選択と位置付けられ,データに基づく選択の必要性を示したことになる. 3.以上と平行して,人物移動データに行動属性を与えるために一人称行動認識システムを深層学習をベースに開発した.20種類の一人称視点映像を用いて評価し,F値が91.8%になることを示した.
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