研究課題/領域番号 |
25330187
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
羽田 陽一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80647496)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピーカアレー / 球面調和関数 / ビームフォーマ |
研究実績の概要 |
本研究課題では,あらゆる方向に対する指向性の再現と狭指向性を両立するスピーカアレー技術の確立を,理論的な側面のみならず,実際のスピーカアレーを構築しながら進めている。平成25年度は,球面調和関数展開に着目し,この展開方式に基づく球面スピーカアレーの指向性がどの程度実環境で合成できるのかを確かめるため,市販の正12面体のスピーカアレーを改良し,その指向性合成実験を行った。平成26年度は,直線アレーによる多重極スピーカについては,概ね指向性が合成できることが分かったことと,3Dプリンタにより正多面体のスピーカアレーが構築できる可能性があることが分かったため,球面スピーカアレーの研究に軸足を移して,指向性合成のアルゴリズム構築と実スピーカアレー実験を推進した。その結果,アレー信号処理分野において通常の座標系,例えばデカルト座標系において研究が進められてきた最小分散ビームフォーマのアルゴリズムを,球面調和関数領域におけるスピーカアレーフィルタ設計に応用することで,球面調和関数領域の係数のまま鋭い指向性を持つフィルタ設計を行えることを明らかにした。また,球面調和関数領域のフィルタ係数から,同一の指向性パターンを維持したまま,ビームの主軸を上下左右に自由に回転することができることも明らかにした。これらの結果を正12面体スピーカアレーへ適用し,実験において指向性再生を確認できたので,平成27年3月の電子情報通信学会応用音響研究会および日本音響学会平成27年度秋季研究発表会で発表を行った。また,3Dプリンタを利用して,正20面体のスピーカアレーの作成にも取り組んだ。スピーカアレーの作成においては,筐体の材質,厚み,組み方において工夫が必要であることが分かり,スピーカ数の多いスピーカアレーについての実際の構築と実験は平成27年度に行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標では,球面配置よりもデカルト座標系にスピーカ素子を配置した方が容易な設計が可能と考え,多重極アレーの検討を行っていたが,3Dプリンタにより球面スピーカアレーあるいは正多面体アレーが容易に設計,作成できる可能性が出てきたため,正多面体のスピーカアレーの検討を推進してきた。その結果,球面スピーカアレーにおいて,球面調和関数領域でスピーカアレーフィルタを設計すると,指向性の回転が容易に行えることが分かった。また,球面調和関数領域においても,フィルタ係数をスピーカごとではなく,球面調和関数展開された係数とし,また,目標となる指向特性も球面調和関数展開した特性としながらも,拘束付の最小分散ビームフォーマの理論を適用可能であることを示し,鋭い指向性が合成可能であることを示すことができた。本件については,平成27年3月の電子情報通信学会 応用音響研究会および日本音響学会春季研究発表会で発表を行った。 一方,本研究課題を遂行するにあたり球面調和関数展開を基礎とするエリア制御をマイクロホンアレーに応用することを考案し,本件については平成26年度に開催されたIEEE主催の国際会議にて発表し,さらに国内論文にも投稿し,掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
全方位に対して狭指向性を実現するでスピーカアレーを構築するにあたり,3Dプリンタにより球面スピーカアレーあるいは正多面体アレーが容易に設計,作成できる可能性が出てきたため,デカルト座標系での直線配置にこだわらず,球面スピーカアレーあるいは正多面体スピーカアレーも視野に入れた検討を推進する。特に,正多面体スピーカアレーについては,正12面体よりも面数の多い正20面体,また将来的には疑似的な正多面体であるサッカーボール構造の多面体スピーカへの発展も視野に入れた検討を行う。これにより,指向性の鋭さや,低周波数領域での指向性合成など,楽音再生や立体音響など応用についての基礎的な検討を推進したい。また,指向性合成のアルゴリズムについても従来のマイクロホンアレーやアンテナ分野で培われてきたものを球面調和関数領域に適合させるなど検討を行いたい。さらに実環境における残響・反射等での指向性の乱れを補正する技術の確立,指向性合成の強調方法の検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿,研究会での英文アブストラクト等における英文添削費用が当初見積額より大幅に低い金額で行えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においても引き続き研究成果を海外を含めて発表するための旅費として使用する。
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