研究課題/領域番号 |
25330188
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
西 一樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (00208125)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 画像情報処理 / カメラ評価 / 手ブレ / MTF |
研究概要 |
本課題では、すでに開発済みの手ブレ計測・補正評価システムの拡張として、カメラ筐体振動・レンズ収差・撮像素子のSN比についても計測・評価可能なシステムの構築を目指す。手ブレ計測・補正評価システムがすでに実用レベルに達しているので、それを拡張した新たな測定・評価項目についてもカメラメーカーにおいて実際に使ってもらうことを前提とした実用性の高い計測ツールの開発を目標としている。 まず本年度は、「カメラ筐体の微小振動を高精度検出可能にする技術の確立」を目指すべく、精密測定が可能なLEDディスプレイの試作を行った。フォーカルプレーンシャッター等による微小振動の検出を可能にするために、従来のディスプレイに対して1フレームあたりの格子点数を増やすなどの改良を行った。当初はXYステージにより既知の微小変位を与えることにより検出精度を評価する予定であったが、振動の測定精度を評価する上でXYステージが必要な動作精度を有していないことが判明したため、LEDディスプレイの設計値に基づき仮想的に変位を与えた画像データを作成しこれより振動検出精度の検証を行った。その結果、画像上で±0.2画素以内の精度で振動が検出可能なことがわかった。試作したLEDディスプレイによる実際の振動測定では、他のカメラとの比較によりミラーレスカメラでのフォーカルプレーンシャッターによる振動が検出可能であることを確認した。 平成27年度に予定していた課題ではあるが、MTF測定法の検討についても一部前倒しで行った。MTFはLEDディスプレイの各格子点のボケ具合を測ることに等しい。特に格子点配列の間隔が画素間隔とは無関係に撮像素子上に格子パターンが投影された場合、画素間隔以下の端数に位置する各格子点の像情報を重ね合わせることで、画素間隔を超えた分解能(超解像)をもつMTF測定が可能になる。その実験検証を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画は「カメラ筐体の微小振動を高精度検出可能にする技術の確立」であり、ほぼ期待どおりの成果が得られたと考える。加えて、平成27年度に予定していた課題を一部前倒しして実施したことを踏まえてこの評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画通り、「手ブレ量と撮像素子SN比の2つをパラメータとする評価法の検討」を行う。撮像素子のSN比は露光時間や撮影感度と密接な関係があり、またそれらは手ブレの大きさとも関係しトータルで画質に影響を与える。そこで、手ブレ抑圧比(補正により手ブレが減少した割合)とSN比を2軸にとったマップを作成し、それを性能比較として用いることを検討する。SN比の測定は、手ブレ測定と共通の動画テストチャートを用いることで行える。すなわちテストチャートの撮影画像において、点発光部分が信号成分、それ以外の背景画像がノイズ成分に対応することから、それぞれのパワー(画素値の二乗平均)を計算しその比がSN比に相当する。1つの撮影画像で手ブレ量とSN比が同時に測定できるので、個別のチャートを用いて各性能を評価する方法に比べてごまかしが効かない方法となる。 すでに前倒しで行っているMTF測定法についても引き続き検討する。MTFの違いを感度よく測定するためには、格子パターンをどのように設計すればよいかが課題である。特にカメラメーカー共通の課題である、撮像素子の傾き測定への応用を念頭において検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
LEDディスプレイの試作費用が、業者の努力により当初予定していた見積額よりも廉価にしてもらえたため。 今年度は人件費・謝金予算が当初の計画より若干増え、次年度も同様に必要となる可能性があるため、同予算への補填として使用したい。
|