本課題では、すでに開発済みの手ブレ計測・補正評価システムの拡張として、カメラ筐体振動・レンズ収差・撮像素子のSN比についても計測・評価可能なシステムの構築を目指す。手ブレ計測・補正評価システムがすでに実用レベルに達しているので、それを拡張した新たな測定・評価項目についてもカメラメーカーにおいて実際に使ってもらうことを前提とした実用性の高い計測ツールの開発を目標としている。 昨年度までにほぼ計画通りの成果が得られている。まず高SNRのMTF測定法を開発し、レンズと撮像素子の間の傾きを高精度に測定可能なことを実験により示した。レンズ収差(特に歪曲収差)の測定法においては格子パターンを利用した新たな手法を提案し、シミュレーションおよびカメラ撮影実験によりその有効性を確認した。さらにシャッター振動測定については、基準パターンの事前撮影とパターンマッチングの導入により画像上で±0.02画素以下の検出精度が得られることを確認した。これは当初の計画以上の成果である。 最終年度として本年度は、これまでの成果をまとめる期間として位置づけ、特にシャッター振動測定の成果に対して論文化を行った。ここでは学術的意義をさらに高めるために、カメラ振動の3次元的振る舞いについてホモグラフィ―行列によりモデル化を行い、各方向への回転運動や平行移動に対する画像への影響について明確にした。また実撮影環境へのロバスト性について各種実験を通して検証し、本システムが高い実用性を有することを確認した。 以上より本研究による一連の成果は、画素レベルの画質が要求される高品位カメラの開発に役立つものと考える。
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