本研究では,タブレット型コンピュータを想定した携帯デバイスのための視線インタフェースを検討する. 前年度までは,携帯端末に付属したカメラを用いた視線計測手法について検討を行うとともに,視線ジェスチャを用いたページ操作支援手法を提案した.HMM(Hidden Markov Model)を用いを用いることで視線動作に内在する特徴を適切に学習しジェスチャ識別が可能か検討した.学習機械には,視線の時系列変化および注視位置変化を入力とした視線ジェスチャ識別を行った.時系列変化に対しては十分な識別精度を得ることができなかったが,注視位置を入力とした場合,精度が向上した.また同時に,視線を用いた選択操作として,マウスクリックに相当するタップを実現可能な視線操作手法についても検討を行った.特に視線特有のサッカードに着目し,スクリーンボタンを利用したインタフェースを実現した.従来手法と比較して誤選択を1/4に削減することが可能になった.さらに,時間による重み付けをした注視尤度を定義することで選択対象が小さくなっても安定した選択を行う手法について検討した. 本年度は,前年度の問題点を解決するために次の2点に関して検討を行った.まず,注視位置に基づいた視線ジェスチャ識別では,注視位置の誤推定にも対応可能なジェスチャ識別手法を検討した.識別精度は個人差が大きい結果となったが,従来よりも精度を向上することができた. また,注視尤度を用いた対象選択では,注視位置を直接用いる手法に比べ,平均で約40%の選択率を向上することができた.
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