不可視に構造化した光で物体を照射し、その撮像画像中に情報を埋め込む技術について、基盤技術の確立と応用の開拓を目的として研究を進め、以下の成果をあげた。 基盤技術としての光の構造化について三つの方法を確立した。第一の方法では、光の投影面を多数のブロックに分割し、ブロック内の空間周波数の位相で情報を表現した。さらに、周波数重化により高密度な情報埋め込み法も確立した。第二の方法では、ロバストな情報埋め込みを可能にした。光の反射率が著しく低い物体表面では光に埋め込んだ情報が消失する。この解決法として、全ブロックで同一位置の画素に同じ情報を埋め込む方法を検討した。1を埋め込むときだけ知覚限界以下で輝度をわずかだけ増す。全ブロックについて同一位置の画素の輝度を積算すれば1を埋め込んだ画素の輝度は積算され、たとえ一部で情報が消失しても検出可能となる。実験から本方法の実現性を確認した。第三の方法として、本技術を動画に適用するため時間的輝度変調による光の構造化技術を確立した。この方法では、埋め込むパタン部分の輝度を知覚限界以下の微小な振幅で変化させ、この微小変化を積算してパタンを読み出す。投影と撮像のフレームの非同期によりパタンを読み出せないケースが生じるが、4フレーム周期で変調を行い、1フレームおきの差分を積算する方法によりこの問題を解決した。 本技術の新しい応用として、撮影画像中に奥行情報を埋め込む技術の実現性を示した。被写体に投影した不可視パタンの特性が被写体の奥行に依存するパタンを用い、撮影画像中に奥行情報を埋め込んだ。被写体表面のテクスチャーの影響による可読性の低下を避けるため、可読性を優先させたパタンを投影し、撮像後に画像処理により可読性と不可視性を両立するパタンに変換する方法を考案し、被写体上のテクスチャーの妨害を受けることなく奥行情報を埋め込むことができる方法を明らかにした。
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